『キイ家でのレツ』
キイ家は落ち目の降霊術師の一族。今では「霊が視える気がする」「何か声が聞こえた気がする」程度の霊能力しか持たない。このまま緩やかに力は失われ、凡人になるのだろう。
力が弱いので今は没落貴族である。
そんな最中に突然生まれたのがレツ、もといレイズだった。
術師一族であるので魔力のあるなしは感じることが出来た。赤子のレツは呼吸が止まる程の魔力の圧を放っていた。
親族たちは思った。「この子は一族復興の切り札となる」と。レツの誕生。みな喜んだ。
この二ヶ月後、元々体の弱かった母親が亡くなる。我が子の異様を思い知ることなく。
レツが成長すると赤子の頃では気付かなかった特徴が見え始める。
レツは虚空を眺め、まるで何かを目で追うかのような仕草をすることが多かった。時には何も無い場所を「さも何かが居るように」手で払い除けることもあった。
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