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    SOUYA.(シメジ)

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    SOUYA.(シメジ)

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    📕彼ただ過去
    かわいい(語彙の消失)

    ##彼ただ

    「来い」
    ――がそう言って祈梅に竹刀を向ける。その目はおいたが過ぎた祈梅を怒る時の父親のようでやはり血が繋がっているのだと痛感し、震えた。
    「ずぇりゃあッ!」
    そう叫んで勢いよく振り上げた竹刀はカランと祈梅の手からすっぽ抜けた。
    「肩の力抜きやがれ、阿呆」

    ――はその手に持つ竹刀で祈梅の肩をポンと軽く叩く。久し振りの手合わせ。いつも――の陰口を言う大人も居ない空間で兄弟2人の静かな場所で。
    兄が居なくならないかいつも気を張っていたから。
    兄を負かしてみたいと意気込んでいたから。
    「……だってよォ……」
    「泣くな、面倒臭ェ」

    「兄ィと手合わせ久し振りだからよォ…」
    「オメェ、それを言い訳にすんならやんねェぞ」
    「・・・・・・っやる!」
    祈梅はぐりぐりと涙を拭いて竹刀を拾う。
    そしてその顔をもう一度上げた時、先程の弱気な弟はどこにも居なかった。
    「だぁあッ!」
    パシッ――!

    竹刀がぶつかり合って音が鳴る。
    いつもは龗神の眷属達がお互いを高め合う大きな道場で兄と2人きり。祈梅は自然とその呼吸が上がってくるのを感じた。
    「・・・っ、腕上げたな祈梅」
    「兄ィこそ相変わらず強ェ……っ!」
    きっとこの兄はまだまだな自分に合わせてくれているのかもしれない。

    だけれど嬉しい。
    密かに鍛錬した。師範にも褒められ、傷もたくさん作ったが男の勲章だと父にも頭を撫でられ。
    それでも敵わぬ兄にも少し認めてもらえた、それが嬉しい。
    「あ……ッ!」
    バシッ――、カランっ――!

    勝負あり。
    祈梅の竹刀は再び宙を舞い、へたり込んだ祈梅の顔前に――の竹刀が。

    「……休憩だ、流石に俺もしんどい」
    そう一言だけ言って道場から出ていった兄が少しだけこちらを向いた。
    「祈梅」
    「な、何でィ」
    負けた事に落ち込んでいた祈梅は驚いて兄の顔を見る。兄はそんな祈梅に少し口角を上げた。
    「……筋は良い。試合じゃねェんだ落ち込むな」

    兄は凄い。その一言だけで。
    自分を劣等感から救い出してくれるのだから。
    「休憩終わったらもう一勝負だ!」
    「わーったよ、仕方ねェ弟だ」
    ――はそう言って姿を消した。水でも飲みに行ったのだろう。祈梅は身体の力を抜いてその場に倒れ込んだ。
    「……兄ィ、強ェ……」

    そう呟いた言葉は広い道場に響いて消えた。
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