郭嘉は天井を仰ぎ、一息つく。
しばらく天井を見つめた後、姿勢を正し座りなおしたかと思えば、周囲を見回し顔見知りの軍師らがいないことを悟ると、机に広げられたいくつもの竹簡をくるくると一纏めにしていく。
そうして纏めた竹簡の束を両手で抱え、郭嘉は立ち上がり政務を行う部屋を後にする。
心無しか、足音を忍ばせ歩く郭嘉は廊下の曲がり角に差し掛かる。ここを曲がれば。郭嘉は息を無意識に潜める。
瞬間、郭嘉の目の前に現れた影。
郭嘉は驚き息を止める。
「どうされました、郭嘉殿」
そこにいたのは、郭嘉が想いを寄せる猛将であった。
「あ、あぁ、張遼殿」
にこり。郭嘉は動揺を悟られないよういつもの笑顔を顔に張り付ける。
驚きと困惑、忍ばせた恋情。全てが混ざっていた。見つからないように、郭嘉は面のような笑顔に務めた。
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