キスより遠くて近い距離.
ぎし。ベッドが軋む音と揺れに、目を覚ます。先生が先に起きたらしい。
微睡みの中でしばらく唸って二度寝を決め込もうとしていると、聞き慣れた金属音に続いてオイルと煙の匂いが鼻を掠めた。枕に顔を埋めたまま視線を上へやる。
ふぅ、と煙を天井に逃がす時の唇も、伸ばした首元に浮き出る喉仏も、その周りに残るキスの痕も、おれの二度寝を妨げた。
「おや、起こしてしまったかね?」
おれの視線に気付いたのか、先生が振り返った。不純な胸の内を見透かすようなタイミングに、慌てて目を逸らす。
「いーや、べつに」
そうかね。言ってまた煙を吐く。漂う煙の向こうの先生の柔らかく細めた裸眼がまとう色香に、息を飲む。我ながら単純だ。
「君も吸うかい?」
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