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    asaki

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    asaki

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    ★かるーい気持ちでお読みください。ヤマもオチもないです★

    笹仁の仁科と、刑桐の桐ケ谷のあけすけトークが聞こえてしまって気まずい拓蒼の三上の話
    三上はまだ〝セッ〇ス〟という単語を心の中でも発するのが恥ずかしいので回りくどい言い方をしています。

    #拓蒼
    topaz
    #笹仁
    sasahito
    #刑桐
    paulowniaWood

    隠す気がない内緒話は他所でやってください! 天気予報では来週から寒波が襲来し、気温が十度ほど下がると伝えている。
    「寒波の初日、日本海側は雪が降り、太平洋側は冷たい雨が降ります。急激な寒さで風邪をひかないようしっかりと対策してくださいね」
     お天気お姉さんはそう締めくくった。
     日中は日差しが強く、コートなども不要の日々を過ごしているのでイマイチ実感が沸かない。
    「寒くなるんですねぇ。じゃぁ、みんなで最後に秋の味覚バーベキューしましょう!」
     朝日奈がそう言うのには理由がある。
     先日スターライトオーケストラがコンサートを行った際に、主催者側からたくさんの野菜をもらったのだ。産地直送の瑞々しいそれらを日々消化してはいるものの、すべてを食べきるには至っていない。そろそろ葉物もしなび始めており、早く食べないと食材を無駄にしてしまうことになる。
    「お肉調達して、カレーとバーベキューで野菜を食べきりましょう!」
     そういうわけで、週末に急遽バーベキューを開くことになった。
     場所は菩提樹寮の庭である。



     当日は朝から下準備を行い、万全の態勢でバーベキューが始まった。
     開始当初は食べ盛りの男子高校生が多いため、想像以上のスピードで食材が減っていった。ある程度時間が経つとお腹が落ち着いたらしく、焼き終わっていた食材はすべて平らげられ、食べたいものがあれば自分で焼いて食べるというセルフ調理に移行した。
     人によっては既にカレーを食べているらしく、食欲を刺激するようなスパイスの香りが漂っている。
     三上はもう少し肉と野菜が食べたいと思い、バーベキューコンロの前にやってきた。
     南瓜やじゃがいも、とうもろこしなど時間のかかる野菜をトングで並べて、肉を並べようとした時だった。
    「仁科、いつもなに使ってんの?」
     背後から声が聞こえた。この声は桐ケ谷だろう。どうやら三上の背後にあるガーデンベッドが並ぶ場所に、桐ケ谷と仁科がいたらしい。
     そこに座って談笑しているのか、桐ケ谷の声は弾んでいる。
    「笹塚がうるさくて、一番薄いやつかな。どこでも調達できるから楽だし。桐ケ谷くんは?」
    「二番目に薄いやつだな。たまに面白いやつ使うけど」
    「面白いやつ?」
    「海外のジョークアイテムっぽいやつ、えーとこういうような」
     ホラといった後、仁科が「えぐ……」とぼやいたので何かを見せられたのかもしれない。
    「それ大丈夫?」
    「悦いかどうかはピンキリだけど、たまにすげぇやべぇのある」
    「うわぁ……」
     ハハハと軽快に笑う桐ケ谷の言葉に三上は妙に引っかかった。
     なにかについて話しているのは分かるのだが、なんとなく三上の勘が〝聞いてはいけない話〟なのではと警告してくる。
    (忘れよう、俺は肉を焼くんだ)
     止まっていた手を動かして、肉を並べる。ジュッという小気味良い音と肉の焼ける香ばしい匂いが、三上に空腹を思い出させてくれた。野菜をひっくり返すときれいに網目がついており、これはいい焼け具合だと自画自賛する。
    「桐ケ谷くんはどれくらいの頻度でしてる?」
    「お互いヤりたい時にすっから多いときは続くし、ないときはない」
     いくら無視しようとも、背後の二人の声はよく通る。少し声を抑えてくれればいいものの、どうしてか彼らの会話は三上にしか聞こえてなかった。
    (他のメンバーに聞こえてたらどうするんだよ)
     三上の背にヒヤリとした汗が伝う。視線を上げて周囲に誰かいるかと見渡すが、バーベキューコンロの近くにはいなかった。どうやら菩提樹寮の入り口あたりにおいてあるカレーに夢中のようだった。ほっと胸を撫で下ろすが、どう考えても――。
    (これ、絶対俺が聞いちゃダメなやつー!)
     最初は何の話か分からなかったが、二人はどう考えても恋人との営みについてあけすけに話していた。
     こういう話を屋外の、人が大勢いる場所で話さないで欲しい。いつもは頼れる先輩の二人の性事情など知りたくないのである。
     三上が心の中でやめてくれと思っても、二人には全く届かず話は続いていく。もしかして三上がいることに気付いていないのだろうか。
    「仁科は定期的?」
    「忙しい時はしないし、頻度的には少ないんだけど……」
     仁科が口籠ると、笑いを含んだ声で桐ケ谷が「へぇ」と呟いた。
    「……もしかして、しつこい?」
    「はは……、桐ケ谷くんたちは一回で何回する?」
     苦笑交じりの仁科の不可解な質問に三上はどういう意味だろうと思っていると、ジュゥゥゥと油が落ちて炭が盛大に音を立てる。三上はしまったと思って、慌てて皿に肉を乗せた。そのまま焼いていたものをすべて更に回収し、早速口に運ぶ。焼き上がった肉はやはりおいしく、三上はもぐもぐと野菜も平らげる。
     気配をなるべく消し、三上という存在が間近にいることを悟らせないように更に肉を焼く。立ち去りたいと思っても、三上も空腹には勝てないのだ。
    「何回、……んー数えたことねぇな。久しぶりだと朝までコースだし、頻度多いときは二回?」
    「朝までコース!?」
     仁科も初耳の情報なのか、驚いたように声を上げた。
    「健康的な高校生男子ってそんなもんじゃね? お互い盛り上がるとそうなる」
     だが、桐ケ谷はさも当たり前のことだとしれっと答えていた。それに対して仁科は考え込んでしまったのか、ジュウジュウという肉と野菜の焼ける音だけが響く。
     三上はもう少し焼こうとそうっと南瓜を掴もうとして、トングをガチンと鳴らしてしまった。沈黙の場面で痛恨のミスである。
    (ほんとに、勘弁して……)
     そう思うも離れられないのは、三上もやはり他人の事情が気になってしまう。
     三上も赤羽といつかはそうなるのではとひしひしと感じているので、その時の為に生の情報が欲しかったりする。偶然とはいえ、絶好のチャンスだ。
     ただそれが身近な先輩の事情だというのは気まずい。彼らの相手が分からなければまだよかったのだが――。
    「納得いってねぇ顔だな」
    「俺をどうこうして何が楽しいのかなって思うことはある」
     仁科は消沈したようにそう言った。さっきまで夜のアイテムについて話していたとは思えない落ち込みぶりだ。
    「笹塚とすんの、悦くねぇの?」
     桐ケ谷の隠す気のないストレートな質問に、さすがの仁科も慌てたように「それは、べ、別物として!」と言い訳をしていた。
    (つまり、悦いんだ……)
     笹塚と仁科の営みがどうであるか知りたくなかったが、あの笹塚がそういうことに熱心なのは意外である。
     普段の二人はネオンフィッシュの活動に精力的で〝相棒〟という言葉がしっくりするような関係に見えた。そこにはいわゆる〝恋人〟という甘さは全く感じられない。けれど、二人は恋人同士で何度も夜を共にしているという。笹塚は性欲よりも音楽欲の方が高そうなので、性欲を優先するということ自体が不思議でならない。
     三上にとって夜のモニョモニョは未知の領域で、男同士で快楽を得るまでには数々のハードルを越えなければいけないものだという認識がある。
     だから、二人の会話は三上の想像の範疇を越えた現実であった。
    「仁科よぉ」
     桐ケ谷が仁科に触れたのか、とんと何かを押す音がした。肩でも叩いたのだろうか。
    「セックスはコミュニケーション。お互い素っ裸で、普段見えない本音が丸見えになる。少なくとも俺たちはそう。ってわけで、これ試して言いたいこと言い合え」
    「これ、さっきの……」
    「ブッ飛ぶくらいイイやつ♥」
     さっきのと言うことは、例のえぐいやつだろうか。そもそもえぐいってどうえぐいのか。
     悶々と考えていると、再び肉がジュワワと音を立てた。慌ててひっくり返すが、今度は焼き過ぎたのか真っ黒に焦げてしまっている。片面が焦げただけなので焼けたら食べるつもりではあるが、折角の肉がもったいない。
    「あ~やってしまった……」
    「よォ、三上ィ。食ってるか?」
     肉の状態に落胆しているとがっちりと肩を組まれ、背後からやってきた桐ケ谷に捕まってしまった。
     どうやら桐ケ谷は三上がここで肉を焼いていたことに気付いていたらしかった。――これは確実に聞いていたことがバレている。
    「授業料もらわねぇとなァ」
    「ななななんの話ですか!?」
    「聞いてたんだろ? えっちなヒ・ミ・ツ」
     耳元で意味深に囁かれ、三上は持っていたトングを取り落とさないようにするのが精一杯だった。ぞくぞくっと背骨にナニかが迸って震えてしまう。
     一体どんなことをされてしまうのかと身構えたが、桐ケ谷は「オラ、俺の為に肉を焼け」と言うだけだった。
    「えっ」
    「まだ余ってんだろ? ほら、食うから焼けって」
    「あ、はい……」
     三上は残っている肉のいくつかを、網の上に並べていく。ジュウジュウという音の合間に「聞きてーことあるなら、俺も仁科も相談乗ってやるから声掛けな」と桐ケ谷はこっそり告げた。
    「仁科ー、お前も食う?」
    「俺は野菜が食べたいかな」
    「三上、野菜追加」
    「は、はい!」
     網の上に野菜を追加しながら、先程の話はやっぱり聞かなかったことにしようと胸の奥にしまうことにする。それぞれ恋人関係は違うので、色々な悩みがあるのは当たり前だ。
     じわじわと色を変える肉と野菜を眺めながら、三上はそう心に決めたのだった。純粋に、馬に蹴られるのはごめんだった。
     三上は桐ケ谷に突かれながら、肉と野菜を焼いた。その後カレーを取ってくるようにとパシられたが、出歯亀してしまった手前従っておくことにしたのだった。
     カレーを食べながら、赤羽とのことを追及されて旨さを堪能できなかったことだけが心残りだ。

     その光景を、眼鏡を光らせた二人が眺めていたことを三上は知らない。


    Fin.
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     無色透明。透明な水のようなヴァイオリンの音色だと思った。色のない、とても澄んだ。滔々と流れていく水のような音色。
     まるで、アクアリウムの水槽を満たす水のようだ。色とりどりのライトで照らせば、無限に思い通りに色彩も雰囲気も変えられる水槽の水。
     透明な音。癖のない音。無限に表情を変えられる音。
     個性がないというのとは全く違う。高い技術の奏者にありがちな、変に主張めいた音色の出し方やこれみよがしな自我や癖がない。どこまでもクリアだった。
     音楽以外で例えるのならば、思い通りの色を思い通りに乗せられる上質なキャンバスだ。乗せたい色を損なわない。
     これが、自分がずっと求めていた音だと思った。

    **

     明け方まで一睡もせず集中して作曲を続けていたから、授業に出席はしたものの、朝からずっとやる気が起きずに、ほぼ眠りの世界にいた。それでもいったん学校へ出てきてしまった以上、睡眠のためだけに家へ戻るのも面倒くさくて、午後は校内の人目につかない場所へ移動しようと思いついた。
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