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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    ロナドラ800字。
    ※死ネタ注意。

    ##94SS

    ■ずっときみを待っている


     私は夜更けに墓地を訪れた。さすがにこの時間帯となれば他に人影もない。ジョンを肩に乗せ、近くの花屋で買った百合の花束を手にして歩いていく。吸血鬼ゆえに夜目が効くおかげで懐中電灯なんてものもいらない。
     やがて目指していたとある墓標の前に立つ。そこには彼が眠っている。
    「……こうしてここに来るの、何度目だろうね。ねぇロナルドくん」
     そう墓石に問いかける。
     彼はずっとずっと昔に死んだ。ひとつ言っておくけど、死因は老衰。最期は私とジョンと、彼と親しかった人々が看取った。
     墓の前にひざまずいて白百合の花束を捧げると、月明かりが辺りをまばゆく照らし出す。空を見上げる。見事な蒼い満月。ああ、彼が空の上からこっちを覗き込んでるみたいだ。眩しくて私は目の上に手をかざす。
    「何度でも言うけど、きみと過ごした時間はとても楽しかったよ」
     その昔に同じ台詞をベッドの上で意識が混濁し始めた彼に言ったら、こう返ってきた。「俺もだよ」って。
    「だから、きみも早く私のところに帰っておいで。そうしてまた私と馬鹿騒ぎしようじゃないか」
     私はポケットから小さな箱を取り出す。そこには彼の遺品であるピアスが入っていた。彼が死んだ後に私はこれをつけようと、ピアッサーで耳に穴を開けようとした。けれど案の定、脆すぎる私は痛みに耐えきれず死んでしまって、何度やってもこのピアスを付けることはできずにいる。
     でもよく考えれば当たり前なのかもしれない。これは彼のものであり、私のものではない。「死んでもいつかお前のところへ帰ってくる」と笑いながら約束した彼から、一時的に預かっているにすぎないのだ。
    「――さて帰ろうか。ジョン。今日の夜食は何がいい?」
    「ヌッヌヌーヌ」
    「はははっ、またホットケーキか。きみも相変わらずだなぁ」
     そうして私は来た道を引き返していく。隣にきみがいないのだけが、嘘みたいだった。
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    高間晴

    DONEチェズモク。チェズの髪を切るモクの話。■ノスタルジーに浸って


    「モクマさん、私の髪を切ってくださいませんか」
     リビングのソファで、暇つぶしにタブレットをいじっていたときだった。スリッパの音が近づいてきたと思ったら、チェズレイがだしぬけにそう言う。モクマは一瞬何を言われたのか理解できなくて、チェズレイに訊く。
    「え? 何つったのチェズレイさん」
    「ですから、私の髪を切ってほしいと言ってるんです」
     チェズレイは、腰まで届くプラチナブロンドを揺らしながら言った。その髪は流れの半ばをモーブカラーの細いリボンでゆるく束ねている。思えば、はじめて会った頃よりだいぶ髪が伸びたものだ、とモクマは感慨にふける。って、そうじゃなくて。軽く頭を振って思考を呼び戻すと、アメジストの瞳が瞬いてふわりと微笑む。――モクマがこの顔に弱いと知った上でやっているのだから、たちが悪い。
     チェズレイはモクマの隣に座り、その手を取って白手袋の手で包む。
    「お願いします」
    「い、いや。人の髪を切るだなんて、おじさんそんな器用なこと出来ないからね?」
     モクマはチェズレイの手を振り払う。下手なことをしてこの可愛い年下の恋人の美しさを損なってしまうのが怖かっ 1901