なるほど、これが、夏のせい!◆
思うに、同人誌作りにおいて、萌えの鮮度というやつはもっとも重要な要素のうちのひとつだ。
自分の内側から燃えあがる情熱、どこかに吐き出さなければ溺れ死にかねないという強い幻覚。
煮詰めた萌えの旨みもいいけれど、煮詰まりすぎては食卓にあがる前に腐ってしまう。
萌えを萌えたままに昇華するにはタイミングを逃さないことが必要で、霞のように儚く消えてしまいそうな妄想のしっぽをいかにして捉えられるかに、全部がかかってると言っても過言じゃない。
つい数時間前まで、話の辻褄を合わせようと何度もこねくりまわすうち、すっかりと萌えの鮮度を失って絶望感に浸っていたわたし――こと、刑部姫は、そういうわけで、唐突に降って湧いた新たな萌えの数々に頭を抱えながら、同時にめちゃくちゃに焦っている最中だった。
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