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    三重@ポイピク

    好き勝手に書いてる文字書き。ツイステのイドアズにはまってます。Twitterはこちら→@mie053

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    三重@ポイピク

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    ツイステ6章ショックのまま書きました、あの異常事態で招集された時のジェの話。イドアズ前提。終始ジェ視点。

    #イドアズ
    idoas

    異常事態再びナイトレイブンカレッジにおける、緊急時の情報共有の流れは決まっている。
    まず余程のことがなければ学園長から寮長へ、緊急事態の詳細が語られる。その規模次第、各寮に及ぼす影響が強い場合などは、寮長から副寮長へ、そして寮生へと情報が共有される。場合によっては寮内での待機、あるいは学外への非難といった指示が出される場合もあるが、極稀である。これほどの指示が出たことは10年以内にはないと言う。
    副寮長は、自身を選んだ寮長から緊急事態の報せをもたらされる。実際のところは報せを受ける前に現象や原因の人物を目撃、遭遇する場合もあるのだが、正式な情報は寮長を経由したものという事実は変わりない。この学園において寮長は職員に準ずる監督の権限を持つため、場合によっては寮生達を寮長に代わり纏め、誘導することも任される副寮長は、緊急時の寮長の言葉を一言一句逃すことはない。
    そう、再三繰り返すが、自身を選んだ寮長から報せを受けるのが緊急事態の基本なのである。故に、オクタヴィネル寮副寮長の職に就いているジェイド・リーチが、スカラビア寮の寮長であるカリム・アルアジームより緊急事態の報せを受け取っている今は、彼にとって異常事態だ。

    「カリムさん、落ち着いて。襲撃を受けたんですか」
    『そうだ、オンボロ寮に変な連中が来て……ジャミルと、ヴィルが連れ去られちまった。他の寮長に連絡取ったら、連絡繋がらないやつもいて、多分同じ状況にいるかもしれない。とにかくジェイド、学園長室に来てくれないか』
    「かしこまりました、急ぎ向かいます」

    優美なインテリアに似つかわしい音楽の中に混ざった、襲撃という物騒な単語に、席についていた生徒達や、ホールスタッフからの視線が集まってくる。しかし今のジェイドはそれどころではない。オクタヴィネルの中は今のところ平穏無事であるが、少なくともカリム、ヴィル・シェーンハイト、ジャミル・バイパー、ルーク・ハントが揃っている場が襲撃を受け、そのうちヴィルとジャミルが連れ去られた。尋常ではない。何より、今部活動に出る為、校舎内にいるだろうアズールから何の連絡もないのはおかしい。
    カリムのことだ、まず寮長達に連絡を通したはずである。そして次に、連絡がつかなかった寮長の下の副寮長に連絡を入れたはず。であれば。

    「ジェイド、何? ラッコちゃんどうしたの」

    ラウンジの中で佇み考え込むジェイドに、スタッフが呼んできたのか、キッチンに入っていたはずのフロイド・リーチが近づいてくる。ジェイドが視線を向ければ、生まれた頃より共にいる片割れは察しよく、ジェイドが厳戒態勢に入りつつあるのを理解したらしい。不思議そうだった垂れ目が、ジェイドの空気を感じ取り鋭さを増す。

    「マジでどうしたの。外?」
    「カリムさん、ヴィルさん、ジャミルさん、ルークさんが居る場に何者かの襲撃が入ったそうです」
    「は? 何それ、だってこの学校って」
    「ええ、防犯のため結界が張り巡らされていますね。しかしそれを破壊した集団が入ってきたそうです。カリムさん達は抗戦しましたが負け、ヴィルさんとジャミルさんが連れ去られたと」
    「意味わかんね、ベタちゃん先輩とウミヘビくん? なんで?」
    「現時点では不明ですが、学園長室に呼ばれているのでこれから向かいます。フロイド、あなたは」
    「オレも行く。だってさぁ、ラッコちゃんからジェイドに連絡来たんでしょ? 結界ぶっ壊して侵入なんて派手な方法、部活に出てるアズールが気づかねえはずがない。でもジェイドに連絡がないってのはおかしいじゃん」
    「ええ、その通りです。向かいましょう」

    全て話さずとも事態を把握する片割れに頷いて、ホール担当の中でも古株のスタッフへ視線を向けたジェイドは「僕とフロイドは抜けます。その間ラウンジを」と声をかければ「了解、何かあったら連絡くれ」と返ってきた。了承の言葉を聞きながら、足は既に動いている。基本として恐れを向けられることの多いジェイドとフロイドだが、スタッフ達は緊急時において彼らを信用する。そして指示には必ず従う。今更疑うこともない。
    フロイドもまた、ジェイドとほぼ同じ長さの足を早めに動かす。平素の、この場に居ない男がいれば絶対に出すことのない速度でラウンジを出て、海に沈む廊下の向こうにある鏡舎へ繋がる鏡に向かう。念のため、ちらりと自分のスマートフォンを覗き見たが、何の通知も着信履歴も出ていない。アズールは沈黙したままだ。
    その沈黙が、ジェイドを更に掻き立てる。脳裏を過るのは、つい数日前に寮長と副寮長にのみ共有された情報。VDCの最中、ヴィルが人知れずオーバーブロットを起こしていた事件について。

    (学園への襲撃、連れ去られたのはヴィルさんとジャミルさんのみ。リドルさんとレオナさんの情報が把握できていない以上、断定すべきではない)

    けれどカリムが、あの世界的豪商の跡取りであるカリム・アルアジームが連れ去られずに、ヴィルとジャミルだけが浚われたという異常事態。この2人について、ジェイドが思いつく共通点は1つしかない。そしてその共通点は、アズールにも通ずるもの。

    (早く)

    早く事態を把握しなければ。確認しなければ。あの時のように、後手に回ることなどあってはならない。早まる足に合わせてズレた帽子を直しながら、ジェイドはフロイドと共に学園長室への道を急ぐ。
    そうして、彼の願いにも似た焦燥はピタリと現実を言い当てていたと、辿り着いた先で知る。
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