無機質な宇宙船は暗い宇宙空間を進む。
暗い宇宙空間と無機質な船内は金属で区切られている。
宇宙船は自動操縦モードにしており
私はただモニターを通して宇宙空間を見つめていた。
以前宇宙空間を自在に泳ぐ生命体を見た。
初めて見たときは
あ、
と声を漏らし慌てて宇宙船を停止させた。
生命体は素晴らしく巨大でまるで小惑星のようにそこにあった。
周りにはその小型の生命体も漂っていた。
宇宙船を停止させ 軌道を変えてその生命体を避けて再び発進させる。
だが スクリーンに映し出したあの姿は
私の偽りの網膜に焼き付いたのだ。
機械化思考が進む宇宙では
有機生命体の美しさは忘却され始めている。
だからと言って自然派団体のように知的生命体の叡智の全てを捨てるのは馬鹿らしいと思うが。
宇宙空間に生まれ永遠に漂い続ける生命体
以前は宇宙飛行士たちの間で一種の宇宙空間に長時間滞在することで発症する心理的ストレスによる幻覚症状だと言われていた。
実在している感覚が無いからその説が出たのだろうか。
確かに そうだ あれは 幻想的であった。
幼少の頃の教えの偽りの機械神より
集会場の外 少し行った草原にホバリングしていた昆虫を幻想的に感じたことがあった。
その昆虫は幾日かしたら朽ち果てて消え去ってしまったが あれは あの小惑星の如き生命体はいつか死を迎えるのだろうか。
論文を探してみた。
宇宙空間を漂う生命体 宇宙海月に関する論文
生命体に関する論文は興味深い。
そこに寿命に関しては記されていなかった。
惑星の水中に存在する類似した生命体 海月の中に不死生命体である種があるようだ。
だがあの生命体に関してはそこまでは研究が進んでいないようだ。
私なら 見届けられる。
そう思うと自分の完璧さに誇らしくなった。
私とあれは同じだろうか。
あれは不死だろうか。
電磁波を用いた一種のテレパシー的実験による意思疎通に関する論文は飛ばした。
興味は無い。完璧な生命体における思考や意志は重要で無いと考える。
完璧な生命体は在り方を重視すべきである。
不死生命体の在り方を。
その点においては機械化をして定期的にメンテナンスを施し偽りの不死性を得ることは私の考える完璧な生命体に多少近付くことであると思うが。
そうすべき私の友人は宇宙海月に興味を示した。
やはり彼は理解っている!
有機体生命体の美しさを!
あぁ!私とあれが似ているか聞いてみたい
勿論 出来る事が多い私の方が優秀で素晴らしくあるが 私が目指した不死生命体の在り方を感じさせるあれと!
彼の答えは素晴らしく私を満足させた。
君もああなればいい
心底 そう感じた。