嫌いが好きへと変わった日(中編)午後、クォーツの稽古場へと足を踏み入れると部屋の隅々に散らばっていた人たちが一斉にこちらに向かってきた。
「白田先輩、お誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます白田先輩!」
「おめでとうございます組長、いつもありがとうございます!」
「白田、その、誕生日おめでとう」
後輩からだけではなく、同期からもそう声をかけられ内心驚いてしまった。今年度に入り組長になってからは以前に比べて同期と話すようになったが、それでも話すのは稽古などでの必要最低限の会話のみだった。そんな同期との間に美ツ騎はいつだって距離を感じていたのだ。
だからこそ、祝われるなど思っていなかった。そんな相手の誕生日を覚えていてくれた同期に前まで感じていた距離はいつの間にか消えていた。
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