【曦澄】地獄の沙汰も犬次第中から漏れ聞こえてくる声に、言葉に、藍曦臣は思わず動きを止めた。指先が硬直する。微かに震えてもいるだろうか。
「ははっ、可愛いな、おまえは」
可愛い? 可愛いと言いましたか、今。
室内から聞こえてくるのは、紛うことなき江宗主の声。藍曦臣が聞き間違えることなど、決して有り得ない声だ。
「なんだ? おねだりか?」
「どうした? 何をして欲しいんだ? おまえは」
ああ、なんて甘やかな声を出すのだろう。
こんな声を藍曦臣は知らない。
「こんなに尻を揺らして。おまえは待ても出来ないんのか? ん?」
お尻?! お尻と言いましたか、今?!
藍曦臣は思わず目を剥いた。
人前で臀部を揺らす?! いったい中で一体何をしているのです、恥知らずな!
2880