皿が空になるまで 締め切りを目前にしてカーヴェは思い立った……――ホールケーキが食べたいと!
「クリームたっぷりのふわふわのやつが食べたい!! 今回は七回も修正したんだぞ!? なのに依頼人ときたら……ああ、もう!」
カーヴェはモラ袋を持って市場へ駆け出した。
外へ出ると、青々しい草木の匂いと共に、心地良い喧騒がカーヴェを包みこんだ。子供の足音や学生のちょっとした議論、商人のかけ声、穏やかな日常がそこら中にあった。
加えて、眠たくなるような暖かな日差しを浴びてからカーヴェの苛立ちはすっかり鎮まり、気がつけばケーキの材料について考えていた。
「えっと……ミルクと砂糖、小麦粉、それにジャムと……あ、いや甘ったるいか? イチゴも欲しいな、無いならザイトゥン桃にするか……よしっ!」
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