Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 61

    よーでる

    ☆quiet follow

    ノウェパートここまで。「そのとき不思議な力が!」に理由つけたくてやったパートでした。

    ##二次創作
    #DOD

    罪の終わり、贖いの果て(6) 精緻な刺繍を施された毬のような結界が、マナの体を囲み、その動きを静止させていた。
     その姿を案じながらも、ノウェはレグナから飛び降りて地上に着地した。ゴーレムの掌から降りたセエレ神官長の隣に、守り手レオナールが降り立つ。
     その腕から降ろされた女騎士に、ノウェは駆け寄った勢いのまま抱きついた。

    「エリス!!」

     温かい。生きている。幻じゃない。
     ただ敵対しただけの人間を大勢斬り殺した自分が、今更友の生を喜ぶのかと頭の片隅で嘲けるが、湧き上がる安堵は消せなかった。

    「ノ、ノウェ。エリスは病み上がりで、傷もまだ塞がってないですから」

    「ごっ、ごめん。助かったんだな、エリス」

    「……ええ。セエレ神官長が処置してくださったの。わたくし、あんなことでは死なないわ」

     頬を赤らめながら頼もしく笑う姿にあのときの死相はない。感謝を述べると、セエレ神官長は首を振った。

    「エリスの気力がすごかったからだよ。それに、マナの応急手当が功を奏したんだ」

    「マナ……」

     あのとき、ノウェの訴えに、マナはエリスの傷に回復魔法を施してくれた。すぐに封印騎士団が駆けつけたので、後は彼らに託して逃げるしかなかったが。
     エリスは複雑な顔をしていた。空を仰ぐと、セエレ神官長の結界の中で凍りついているマナが見える。
     空中で静止して、瞬きもせず、呼吸も感じられない。

    「あれは……」

    「僕の契約紋を解析して開発した、時空停止の結界だよ。天時の鍵の基になったものだ」

     セエレ神官長の表情は苦かった。女神を封じた五つの鍵。反対していたセエレとレオナールの天時と宝光、精神が不安定だったアリオーシュの気炎と神水、失脚したヴェルドレの明命の鍵をそれぞれ後任に引き継いで、女神を苛む封印は存続した。

    『それで? 世界が終わるまで、ああして悠長に先延ばしにしてやるつもりか?』

     レグナの冷ややかな思念に、セエレ神官長は首を振った。

    「そこまで長くは保たない。平時ならともかく、今は余裕がないしね。僕の魔力が尽きる前に、マナを助けないと」

    「助けられるんですかっ!?」

     顔を輝かせたノウェにセエレは頷いた。

    「マナの心に入って、目覚めさせるんだ。マナが覚醒すれば、神に対抗できる」

    「心、って、そんなことができるんですか?」

    「マナの読心の力を使うんだ。アレはマナの力で、神の力じゃない。こっちで干渉して強めてやれば、マナの夢に潜れるはず」

    『もっと容易い方法があるぞ。その女を今すぐ殺すことだ』

     割り込んだレグナの思念に、ノウェは腹が燃えるような怒りを覚えた。睨みつけた《父》は、平然と後を続けてくる。

    『その女と神は一体化している。今ならその女ごと神を葬れるはずだ』

    「それはできません。無策で神を殺せば、大いなる時間が……」

    『封印が解けておる今は些事であろう。案ずるな。神の後釜には、我らが』

    「レグナ」

     鋼のように冷えた声に、レグナは思念を途絶えさせた。セエレが後を続けた。

    「ぼくはマナを助けたい。兄だから、償いだからというだけじゃなく、神の器になっているマナなら、大いなる時間を破綻させず、神の干渉を断てるはず。
     それが、ぼくと、マナの償いにもなるって、信じたい」

    『夢を見たくば好きにするがいい』

     レグナが引き下がったのを見て、セエレが一同を見渡す。

    「マナの夢に潜るのは、ノウェにお願いしたい。君の魔力ならマナの心の中でも自分を保てるはずだし、マナと君は仲間として過ごした時間がある。
     その間の警護は、レオナールと、レグナに。ぼくは結界の維持があるから、夢に潜る術はエリスにお願いしたいんだけど、いいかな?」

     それぞれが頷く。レグナは渋ったが、ノウェが口添えすれば了承した。いつものことだが、この滅びの中でいつも通りのやり取りができたことが、少し可笑しい。
     エリスだけが、俯き、眉を顰めていた。ずっとマナを敵視し、殺そうとしてきたエリスに任せるのは、ノウェも不安だったが。

    「わたくしはこの女に、命を救われました」

     苦虫を噛み潰すような顔で、エリスは告げた。

    「ならば、わたくしの誇りにかけて、その借りは返さねばなりません。行くわよ、ノウェ」

    「ああっ!!」

     エリスと、再び共に戦う。喜びと決意に胸を張り、ノウェは空で凍りついたマナを見上げた。
     必ず救ってみせる。エリスの頷きに合わせ、ノウェは強くマナの名を呼んだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
    3697

    related works