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    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

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    まろんじ

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    星の声7

    ##宇奈七

    ……何と言うのだろうか……。「変」、だな。
    初めは、こういうことを話すつもりではなかったのだ。こういうことまで、と言うべきか。奴が──アスプロが、オルペウスが、どんな男だったのか……そんなことまで、話そうとは思っていなかった。
     彼女にも話してはいない。昔、親しくしていた男がいたが別れた、としか伝えていないはずだ。そこから彼女が何かを察した可能性はあるだろうけれど。
     お前に、アスプロのことを覚えていてやって欲しいのかもしれない。無論、覚えていると言っても、四六時中考えているようなことを望んでいるわけではない。お前の心の片隅、ほんの小さな場所でいいから、奴の居場所を作ってやって欲しいのだ。恐らく、そこにしか奴はいられない。
     奴の痕跡をこの世で最も色濃く、心身に刻んでいるのは俺だ。自分でも分かっている。だが、俺はもうすぐいなくなる。俺は俺自身がいなくなることを痛くも痒くも思わない、だが──奴がどこにもいられなくなる、と思うと、言いようもなく胸が苦しくなる。
     ……ああ、目に浮かぶようだ。俺を案じるお前の顔が。例えば俺が少し走って息を切らしただけでも、お前はこちらが気の毒になるほど心配をするのだ。「大丈夫? ねえ、本当に、大丈夫なの? クロは、元気だよね?」と。大丈夫だ、と言ってみせると、泣きそうなまま微笑む。いつもそうだ。今も──この記録を聞いている今もそうなのか? お前がそんな顔を見せる相手は、一体どんな人間なのだろうな。会って話ができないのが、心から残念だ。お前は優しくて、少し怖がりで、けれど怖いのを押し隠して優しさを分け与えようとする、そんな柔らかな強さをも持っていた。そんなお前に相応しい人間が、傍にいて欲しいと常に願っているよ。
     ……どこまで話したのだったか。そう、アスプロと二人で生きていこうと、約束をしたところまでだ。続きを話そう。
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