Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🐓 🐦 🐧 🐣
    POIPOI 566

    まろんじ

    ☆quiet follow

    星の声9

    ##宇奈七

    俺たちは腹の子どもを伴って、最後の任務に赴いた。違法薬物の製造に関わっていた製薬会社がターゲットだった。コーキノの破壊工作で会社の内部組織はめちゃくちゃになり、主要人物は全てマヴロが毒物で一掃していた。あとは、その会社の代表者をアスプロが狙撃して殺害すれば全て終わりだった。
     俺は、いつものようにアスプロの護衛についていた。万全の体調とはいかなかったが、任務中はただ心を静かにしてナイフを握るだけだ。こいつの命を狙いに来る奴がいれば、一人残らずナイフの錆にしてやる、と神経を研ぎ澄ませていた。
     異変に気付いたのは、「まずい」というアスプロの声が聞こえたときだった。
    「殺し損ねた……居場所がばれる。逃げるぞ、嬢ちゃん」
     俺は、スコープを目に当てた。標的である男のスーツが、右肩から腕や胸にかけて血に染まっているのが見えた。男は、大勢の屈強な護衛たちに囲まれていた。護衛の一人が、スコープ越しに俺を指差したかと思うと、彼らは男を守る数人を残してある方向へ駆け出した。
    「こちらへやって来る。広い場所へ移ろう。お前も近接用武器の用意を──」
     そう言いかけたときだった。
    「嬢ちゃん!」
     銃声が鳴り響いた。それが聞こえた瞬間にはもう、伏せていたはずの奴の背中が、目の前で崩れ落ちた。
     俺は口を「あ」の形に開いたまま、動けなくなった。奴が倒れた床には、左胸の辺りから鮮やかな血溜まりが広がり始めた。
    「銃を持ってる奴は……あっちにもいた、ってこと……だな」
     奴は、通信機のボタンを決められた法則通りの順番で押した。緊急通報の押し方だ。
    「今、コーキノかマヴロか、手の空いてる方が来る。どっちか、早く着いた方と一緒に嬢ちゃんは逃げるんだ。俺は、後から来た方に運んでもらう」
     俺は、力いっぱい首を横に振った。
    「私がお前を連れて行く。いくらあの二人でも、お前を他の人間に預けたくなんかない。そんな、そんな体で──」
    「伏せろ……!」
     奴の必死の声で、咄嗟に体を床に着けた。銃弾が数発、頭上を通って行った。今度は──いや、今度こそは、俺を狙うつもりなのだろう。護衛を殺してさえしまえば、近接戦闘ではその道のプロに劣る狙撃手だけが残る、と見込んだのだろう。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍😭😭😭👏💘💘✨😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    まろんじ

    PROGRESS星の声17その次の日のことだ。
     ホテルの部屋に付いていた固定電話が鳴った。受話器を取るとフロントからで、俺に電話が来ているから繋いでもよいか、とのことだった。
     依頼者との連絡にホテルの電話を使う契約はしていない。日本には俺の知る人間もいない。「人違いでは?」と尋ねると、相手はワカモト・カオリという俺の知り合いだと名乗っているという。俺は尚も躊躇っていたが、長い金髪の女性だと聞かされるとすぐに承諾の返事をした。
    「まあ、なんて不機嫌なお声。もしかして、寝起きでいらっしゃった?」
     何の用だ、という俺の言葉に対する返答である。相変わらず甘ったるい声をしていた。
    「ちょっと、困ったことになっていますの。あなた、とってもお強いから、力になってもらえないかと思いまして」
     話を聞くと、またしつこくあの中年の男に追われているらしかった。それを追い返して欲しいというのだ。
     殺しではない仕事は受けないことにしていた。相手が生き残れば、俺の名前や身元が割れる可能性が強まる。殺すのではなく、追い返すだけだというのなら、俺よりも警察などの方が適任だろう。
     そう答えようとしたときだった。
    「それとも……あなたに 813