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    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

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    まろんじ

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    星の声10

    ##宇奈七

    敵にはこちらの居場所が知れている。敵方には、一発で人間の左胸を撃ち抜く腕前を持つ狙撃手もいる。味方の狙撃手は瀕死に近く、遠距離での応戦はほぼ不可能だ。その上、いずれは近接戦闘に長けた者たちが大勢、俺たちの元へやって来る。
     そして何より──。
    「なあ、嬢ちゃん……。いいから……。頼む」
     アスプロが、おのが半身にも等しい男が傷付いて倒れている。俺は、涙を堪えながら必死で止血を試みた。白い布が何枚も、赤く黒く染まっていった。奴がそれを拒もうとすれば、「馬鹿」だの「黙れ」だの「喋るな」だのと罵倒していた。それしか、言葉が出て来なかった。戦況と感情の両方に、絶望で押し潰されそうだった。
     ああ、と奴が何かに視線を向けた。銃弾が止んだ隙を見て、コーキノがこちらへやって来たのだ。
     コーキノは奴を一瞥すると、その傍から俺を引き剥がした。何をする、と俺は抵抗したが、情報戦を専らにするとは言えあの子供時代の訓練を生き延びただけのことはあり、コーキノは俺をあっさりと取り押さえた。
    「脱出経路を検出した。行くぞ」
     それだけ口にして、コーキノは俺を引きずるように歩き始めた。いやだ、放せ、戻らせろ、と俺は尚も足掻いた。
    だが──。
    「あとでな。──嬢ちゃん(アステル)」
     ──力が入らなくなった。景色がぼやけ始めた。音が遥か遠くに聞えた。俺は、半ば意識を失ったような状態のまま、コーキノに腕を引かれてその場から脱出した。
     奴の目が、帽子の下で笑むのが見えた。
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