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    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

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    まろんじ

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    星の声15

    ##宇奈七

    俺と彼女の関わりも、七緒には詳しく話していなかったな。彼女と知り合ったのは、俺が二十一歳で日本へ渡ってきてからだ。
     俺が十七の時に「黙示録の四騎士」は解散し、コーキノとマヴロは暗殺稼業から洗った。だが、俺だけは、様々な国を渡り歩いて人殺しを続けた。組織ではなく、その都度依頼者と契約していた。言わばフリーランスの殺し屋だ。
     ギリシャから始まり、仕事を探してさまよっていたら、偶然にもユーラシア大陸を東へ東へと進んでいた。ヨーロッパを出て、アジアへ、あの巨大なチャイナへとやって来た。チャイナでの仕事を終えてから、次に依頼された案件の場所が日本だったのだ。
     極東の島国、というのが俺の日本に対する認識だった。ただ、どこか親近感や懐かしさを覚えたのは、俺と同じ黒髪の人間が多かったせいだろうか。
     日本での仕事はあっさりと片付いた。とある暴力団の組頭を消し、その息子を依頼者である別の暴力団の幹部の元へ連れて行く。剣を習っていたのか、息子であったその少年は真剣を構えて俺に立ち向かって来た。だが、手にしたものが真剣だろうと銃だろうと、人を殺したことのない人間を素手で制圧するのは容易いことだ。俺に組み伏せられた少年の、憎しみに満ちた視線だけはよく覚えている。猛禽類のようだ、と思ったのと、後にその少年の名前が鳥に由来するものだと知ったからだ。何という鳥だったかまでは、忘れてしまったけれど。あの憎しみを忘れていなければ、今は他にない強さを持った男に成長しているかもしれないな。
     仕事を片付けた日の深夜、俺は繁華街の路地裏を歩いて依頼者に用意されたホテルへ向かっていた。大きな道路は歩かないのが習慣になっていた。繁華街は裏社会の巣窟だが、大通りは避けて通るのが無難だろうし、余計なトラブルや揉め事にも巻き込まれずに済むだろう。
     そう思って歩いていたのだが──。
    「待て! このアマ!」
     カッカッと何かがコンクリートを叩く、切迫したような音が近づいて来て、それから男の怒声が響いた。俺の横を、金色の長い髪をした女が走り抜けて行った。
     直後、俺は小柄な中年の男を投げ飛ばしていた。黒髪に黒い服で路地裏を歩いていた俺が、その男には見えていなかったのだろう。彼は不運にも俺の背後に立ち、背後に立った人間は問答無用で制圧する訓練を受けている俺に取り押さえられたというわけだった。
     痛い、放せ、と男が呻くのを横目でちらりと見てから、金髪の女は路地裏を抜けて大通りへ出て行った。人に溢れた繁華街の大通りへ、彼女が溶け込むのにはそう時間はかからなかった。
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