Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    まろんじ

    主に作業進捗を上げるところ 今は典鬼が多い

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🐓 🐦 🐧 🐣
    POIPOI 566

    まろんじ

    ☆quiet follow

    星の声19

    ##宇奈七

    暴力団組長を殺し、その息子を依頼者に引き渡す仕事が終わってからも、同じ依頼者からいくつか仕事を受けていた。俺はそれらをこなすため、しばらく日本に滞在する予定になっていた。
    同じホテルに長く滞在するのは避け、数日おきに別のところへ泊っては出ることを繰り返す。日本でなくとも、ホテルのあるような国ではいつもそうしていた。だから、俺の居場所は簡単には探れないはずだった。
    それなのに、彼女はどうやったのか俺のいるホテルに必ず電話をかけて来た。名乗る偽名はその時々で異なっていたが、俺はやがて、フロントから電話が入ればその女だと分かるようになっていた。「今度は何の用だ」と答えるよにまでなってしまって──つまり、彼女の依頼を受けることが『いつものこと』になってしまっていたのだ。
    彼女の依頼は大抵、自分に付き纏う男を消すことか、狙いを定めている男を彼女の元へ攫って来ることだった。そして、攫われて来た男の大半は、消すよう後に依頼された。
    報酬は金で受け取る、と言ったら、彼女は案外と素直に支払った。それも、いつも依頼者の中ではトップクラスの金額をぽんと寄越すのだ。日本円にして六桁は下らない。一度、どこからそんな金が出て来るのか、と尋ねたことがあった。すると、彼女はまたあの唇をにこ、と歪めて言うのだ。
    「わたくしに是非受け取って欲しいって、お金をくださる男の方がたくさんいらっしゃいますの。お断りしても皆さん食い下がるものですから、最近はすぐにお受け取りすることにしていますわ」
    「何の礼も求めずに、お前に金を? そんな虫のいい話があるのか?」
    「あら、お礼なら差し上げていますわ」
     ち、と頬をあの唇で吸われ、俺は咄嗟に動けなくなった。
    「こうして差し上げるとね、皆さん次はもっとたくさんのお金をくださるようになるの。次々、お金の額が大きくなるの。面白くってよ」
     俺は、やれやれと首を振った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💘💘😍😍💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    まろんじ

    PROGRESS星の声12目が覚めた後、医師や看護師たち、コーキノとマヴロから聞かされた話を統合すると、こうだ。
     俺は、アスプロが死んだと聞いた途端、何も言わずにナイフを取り出した。最初は胸を、そして腹や脚や、顔や首、とにかく体中をナイフで刺して傷つけたという。
     途中から何事かの言葉を泣き叫んでいたが、コーキノとマヴロは俺を抑え込むのに必死で、よく聞き取れなかったと言っていた。「オル──何とか、と言っていたが」とコーキノが何か聞きたげにこちらを見ていたが、俺はただ俯いていた。
     この自殺未遂により、俺は視野の半分ほどを失っている。見えている部分にも負担がかかり、何十年か後には見えない部分の方が多くなる可能性が高い。
     それから──。
    「子宮の損傷が激しく、手術を行いましたが……」
     腹の子は死んだ。いや、俺が殺した。
     俺は黙って話を聞き、それから感謝の言葉を述べた。医師たちが、俺の病室を出て行った。
     ──どうして、生き残ってしまったのかな。
     そう思わないではいられなかった。
     自分だけ──一人だけ生き残って、何の意味があるというのだろう。四騎士はあの任務を最後に解散が決まっていた。俺の、本来ならば俺と 1375