「わあ!ねえねえキース!ピザみたいなお月さまだ!」
俺はキースとビールフェステバルに行って。それでその帰り道空を見上げると、ピザみたいなまるいお月さまが見えて、キースに教えてあげようと思って空を指さした。
「お…?ピザ」
キースは酔った顔で空を見上げた。ビールフェステバルはいろいろな国のビールが飲めたので、俺はついつい全種類飲んじゃって、キースも俺のペースに付き合ってたから、けっこう飲んじゃったみたい。
キースはしばらく怪訝な顔でぼうっと空を見上げてて、頭をぼりぼり掻いたあと言った。
「あー…形?」
「そう!すごくピザみたいにまるいお月さまだろキース」
「あ、まあそういわれりゃ、…そうかな」
「そうだろ」
「そうですね。じゃあトマトソースとベーコンでもまぶして太陽でこんがり焼いたら世界一のピザの完成ってか」
「世界一のピザ…!!!」
俺はごくりとつばを飲み込んだ。見上げてる空に浮かんでいるお月さまがピザだったら!!!
「どうしよう!!一生かかっても食べきれない!毎日ピザだ!!わーい」
ぐううう
俺はさっきもピザを食べたけど、お腹がなってお月さまを眺める。きっとお月さまのピザは食べても食べてもなくならないよ。俺は宇宙服を着てお月さまのピザを食べている空想をしてすっごくお腹が減ってきた。部屋に帰ったらピザを食べよ。って思ってるとふらふら歩いてたキースが俺の服の袖を引っ張ってちょっと拗ねた顔で言った。
「なんだよ。月のピザじゃなくてオレの作ったピザ、毎日食べろよ」
キースは酔ってて、ちょっと舌足らずに言って。
「オレは、べつにディノのピザ一生焼いてもいい」
キースはちょっとムキになったかんじで、俺にそういって。
「月なんかにいくなよおお」
キースは完全に酔ったぱった声。はは、キース、かなり酔ってる。俺はというとキースに駄々こねられてぎゅっと道の真ん中で抱き着かれて、けっこう、いやかなり、うれしかった。キースに行くなよ、って言われると、俺はここにいてもいいんだってすごく思えるんだ。
キースはそんなに簡単に人を好きにならない。っていうのはいつだったか、キース自身も言ってたことで。つまりキースはすごく優しいから、俺みたいな人間の(――俺は人間なんだろうか)、すごく嫌なとこ、だって丸ごと好きでいてくれてるんだ。そういうキースみたいな人はたくさんの人を好きになると大変なんだろうと思う。だから俺はキースに特別だって伝えられると、安心する。うぬぼれじゃないけどキースは俺の事ずっと好きでいてくれる、って思うから。
そういう事が頭の中をよぎっていると、すごくラブアンドピースな考えが浮かんだ。うん、ピザは独り占めしちゃだめだ。そんなのラブアンドピースじゃない!
「キース、お月さまのピザ、二人で食べに行かない?」
俺は月を見上げてそういったんだ。お月さまはピザ生地色をして輝いてる。
「俺とキースでお月さまにトマトソースを塗って、サラミとかベーコンとか乗っけるんだ」
ニヒっと笑うと、キースもつられて空を見上げた。
「おー…ブラッドたちもつれてこうぜ。二人だと胸やけしそ」
「じゃあ、ハンバーグとかショコラとかお寿司とかええい、ドーナツだってなんだって乗っけちゃえ☆」
「うん、いいなそれ。オレはピザよりビールだな。月ってビールあるのかぁ」
「あるんじゃない。ほらビールの色してるからきっとビールも湧き出てると、思う」
「そっかあ飲み放題かあ…へへへいいな」
みんなでお月さまのピザをかじる光景が浮かんできた!うん、とってもラブアンドピースだ!!
俺はお酒に酔ってはないけれど、キースの言葉に気分がふわふわしてきて、キースの手をつかんで踊りながらタワーに帰ったんだ。