T2感謝祭5 酸素音速食べ歩き企画参加作品(仮題:2人で鍋を) 俺の視界の端っこで、純太のよれた前髪がふにゃりと垂れ落ちた。
英語のテキストから書き写した問題文の、( )に当てはまるだろう構文を書き込み目を離してすぐのことだ。
ハッと手が伸びそうになって、問題を解くのに集中している気配に、またハッとさせられる。続けて、勉強の邪魔をする意義などない錯覚を起こしたことに気づいた。頬が勝手に熱くなる。
チーム2人を結成してからというもの、俺はしばしば、こういう勘違いを起こす。
今回は、垂れ落ちた前髪が純太の耳に引っ掛けられていたんだろうことと、その視界を囲う俺自身の髪を耳に引っ掛けようとしたこととを、混同したせいだ。
呼吸と体動を合わせようと試行錯誤していた頃や、純太と2人で連戦を重ねていた頃には、人知れず恥じるとともに、誇らしくもあった感覚だ。
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