月下の夜想曲【三夜目】藍曦臣は、霊力の制御の修業のために夜狩りをして旅をしていた。
鉄紺の旅装束の仙師の噂は、瞬く間に世間に広められた。
笠を深くかぶって、布面をつけているため顔はわからない。
しかし、見える目元は涼やかである為か色男とされていた。
そんな鉄紺の仙師は、月に一度蓮花塢から外れた雲夢の町に通っているという。
紫の花を求めて、もう半年近くは経っているのではないだろうか。
花が咲いている妓楼は、江宗主が楼主を務めている妓楼であった。
色を売らずに芸を売る妓楼だが、そこは美しい妓女ばかりが集まっている。
彼女たちに陳情を申し上げれば、蓮花塢に届く事もあってか人気の店だ。
「こんばんは、竜胆」
「今夜も来たんですね」
「おや、つれない。何か月も通っているのに、まだ花のかんばせは見せてもらえない?」
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