暗い湖面が、満月から落ちる光に輝いている。
風が、影となった蓮のつぼみを揺らす。
江澄は露台に座り込み、酒の甕をかたわらに盃を傾けた。
その隣には白い校服の男が座る。彼は盆から茶碗を取り、蒸した茶を口にする。
こんなふうに、藍曦臣となにをするでもなく過ごすようになったのはいつからだろう。
思い返せば、きっかけは自分だったと江澄は笑みをこぼした。
一年よりも前のこと。寒室で宗主としての語らいを終えた後、少しばかり休みたくなって、常の倍以上の時間をかけて茶を飲んだ。藍曦臣はそんな江澄をなにも問わずに受け入れてくれた。
江澄はちらりと隣の男を盗み見た。
背筋を伸ばし、湖をながめる姿は美しい。
それから機会があると、こうして二人で過ごすようになった。この時を江澄は好ましく感じていたし、できるだけ長く続けたかった。
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