「花火」 遠くで、花火大会をやっているらしい。興味がなかったから、見るまで知らなかったけれど。
「見てください、椎名さん。あれ」
新しく出来たという高台のカフェでデートして、ゆっくりふたりで話した帰り、マヨイが遠くを指さした。木々の隙間から、夜空を背景に色とりどりに咲き乱れる花火が見える。
「ふふ、まるでこのまま握り込んでしまえそうなサイズですねぇ」
豆粒サイズ、とは言わないものの、大き目の飴玉くらいのサイズに見える花火を、マヨイは差し伸べた手を開いて、手のひらの上でころころと転がすように揺らしている。横に並び立つニキから見ると少しずれて見えるものの、きっとマヨイの目からは、手のひらの上に花火が載っているように見えているのだろう。
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