プライオリティ【オル相】 最初に触れたのはどちらだったのか、今となってはもう思い出せない。きっと偶然だった。
隣に座ったのも。触れ合わせた手が、狭い場所に押し込められたような位置取りで誰からも見えなかったのも。
でも、それを離さなかったのは酔っていたからだ。
体勢を直すときに偶然触れた指先ごときを気色悪いと振り払うほど狭量ではない。触れたな、くらいの些事で終わるはずだった温もりが、妙に長いことずっとそこにあって。
次の飲み会でオールマイトの隣が空いていたのはマイクの策略で、その次の寮の宴会に巻き込まれたときにはいつでも逃げられるようにソファの端を狙ったら並び順がそうだっただけで。
流石に鈍感な俺でも、続くこれが本当に偶然なのだろうかと疑うくらいの頭はあった。人の視線を集めない位置に置いた釣り餌のような俺の手に、場所を確認することもなくさりげなく置かれるオールマイトの手。
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