彼女のともだち①side-A
「 ねえちょっと聞いてよ羽京ちゃ〜〜ん!」
放課後の教室。いつもの賑やかな声で、一人のクラスメイトが駆けてくる。
……今日は木曜日だから、科学部の部室は空いているはずだが、そういえば論文の提出期限がどうとか言っていたっけ。
そう思い当たって、何時間かは拘束される目算でスケジュールを組み直す。
机の前に来るなり、彼女は唐突に胸を鷲掴んできた。
まあ、いつものことだ。
「 はいはい、今日はどうしたの、ゲン?……とりあえず話聞くから帰りにスタバにでも寄ろうか」
ちょうど、新しい抹茶スイーツが出てたはずだよ。
そう言うと、ゲンはパッと表情を輝かせる。
彼女が緑色のスイーツを好む理由も、本当は、抹茶味のスイーツが好きなのは彼女自身ではないことも知っていた。
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