オチがつかなかった目が覚めたら知らない場所にいた。
なんてくっだらねえ在り来りな誘拐サスペンス冒頭の定型文なんぞ思い浮かべんだろうなあ。そう考えながら、転がっている数人の男女をベランダで茶をしばきながら見下ろしている。
いくら掃除しても誤魔化しきれない赤いシミと腐敗臭のする四角い巨大な箱。金と権力に飽きた富裕層共が下層市民の命をエンタメとして消費する場所、それがこの施設だった。コンクリートの床に転がされている男女は、哀れにもこの余興に巻き込まれてしまった善良な市民だ。バックボーンも年齢も家族構成もバラバラ。こんなことに巻き込まれるだなんて余程恨みを買っているのか犯罪を犯したかでもしたのだろう。可哀想なことである。
嘘、ホントは昨日駅前のパブで酔い潰れて眠っていたのを適当に拉致してきた。そいつがどう生きてきたかとかクソどうでもいい。問題があろうが揉み消せばいいだけの話なので。
施設のセキュリティをチェックして、全てのドアにロックがかかっていることを確認する。そうこうしているうちに何人か起きたようだ。ブロンドヘアのケバい女が唾を飛ばしながら喚き散らしている。下が騒がしい。手元の湯のみに視線を向ける。茶柱が立っていた。縁起が良い。五月蝿いので右手を上げれば、発砲音と共にブロンドヘアの女の頭が吹き飛んだ。静かだ。茶で唇を湿らして口を開く。
「おはようございます、皆様ぁ!ようこそいらっしゃったいらっしゃった!散々飲みまくって起きたら硬い床。ふかふかのベッドでなくて申し訳ない。突然ですが皆様にはこれから金持ちのクソ野郎共の道楽にお付き合い頂きます」