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    秋月蓮華

    @akirenge

    物書きの何かを置きたいなと想う

    当初はR-18の練習を置いてくつもりだったが
    置いていたこともあるが今はログ置き場である
    置いてない奴があったら単に忘れているだけ

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    秋月蓮華

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    内容見たら27日目でしたが
    熱中症には気を付けようという話

    #茂島
    burma

    茂島27日目六月二十七日は小泉八雲の誕生日だ。
    島田清次郎は帝国図書館の近くの町へと出かけていた。弟分の小川未明が頼んでおいた誕生日プレゼントを引き取りに来たのだ。
    この町には坪内逍遥の誕生日プレゼントを引き取りに行くときにも来ていた。未明は体調を崩していて回復はしたのだが、本日は酷暑だった。
    梅雨が明けて、いきなり太陽が攻撃的になったのである。太陽が殺意と悪意を存分に込めて照っているのだ。

    「ケーキ屋さんのフルーツサンドだったよね」

    「絵描きの分も引き取りに行かないといけないが、二人とも予約はしている」

    「おいらも美味しいお菓子が食べたいって想っていたんだよね」

    水分の補給も塩分の補給もしている。隣にいるのは草野心平だ。この暑さで外に出るのを余計にうざったがった絵描き……帝国図書館の一室で四六時中絵を描いている少女……が
    フルーツサンドを食べたいなと言ってきたのだ。未明が予約したのと同じ品である。清次郎は予約をしていないがあれば買おうかぐらいである。

    「貴君たちも買い物か」

    「アンタもか」

    心平が来たのは清次郎が朝、体調は回復したもののまだ心配されていた未明の代わりにこの町まで出かけようとしていた時に心平もどこかに出かけたくて
    ついでだから一緒に行こうと共に行動をすることになったからである。清次郎からすると心平は付き合いやすい方だ。たまに殺意が高いけれども。
    ケーキ屋に向かっている途中で見知った顔を見つけた。内田百閒だ。百閒はいつもの服装ではなく、着物姿だ。

    「旅に出ようと想って許可を取ったのだ。二泊三日。ゆっくりと旅路に向かうとしてこの町に寄った」

    旅の許可は申請しておいた方が得なのである。いきなり旅に出ても連絡さえしてもらえばいいのだがなんにせよ連絡は必須だ。

    「弟分のことはしておいたほうがいいからな」

    「年代的に見れば未明君の方が上だけどね」

    ちなみにこの中だと最年長は百閒であり、次が清次郎で次が心平だ。太陽が照りつける中、百閒は帽子を押さえている。清次郎は日傘をさしていた。
    日傘兼雨傘を松岡譲に持たされたのだ。心平が隣にいる。

    「日差しが強い。去年よりも暑くなった気がする」

    「太陽王……将軍……そんなものが存在しているのかもしれない」

    「買い物して、ご飯食べて、帰ろ」

    「いつもの店でいいな」

    数日前にも世話になったが行きつけのおにぎり屋があるのでそこで食べることにした。買出しメモは預かっている。この暑さだ。誰も買い物になんて
    行きたくないので行こうとする者にみんな任せてしまう度が高くなる。清次郎達はまずフルーツサンドを引き取りに向かう。



    酷暑であった。
    清次郎達はしっかり対策をしてフルーツサンドを引き取り、買い物を済ませ、水分補給もしておき、お昼ご飯を食べようとしたのだが、

    「島田君!! 無事か!!」

    斎藤茂吉が大慌てでおにぎり屋へとやってきた。おにぎり屋は休業中の看板が立っていた。普段は開いているのだが、騒動があったのだ。

    「……無事だ。元気だぞ。慌てるな」

    「未明君が行こうとしていたが、体調面もあり私が来たのだが、熱中症の者が多発したと」

    「そうそう。おいらたちがこのお店に寄ったら熱中症で倒れた人が何人も出たんだ」

    「俺たちは熱中症講座を受けていたからな。対処をしていたのだが」

    清次郎と心平、百閒はおにぎりを食べていた。漬物や空揚げ、味噌汁も出されている。
    フルーツサンドを引き取って、この店で食事をとることにして座敷で食べることにした。昼時だというので店の方は混んでいたのだが、
    幸いにも座敷は開いていた。未明にどんなお土産を買っていこうかとしているといきなり清次郎達の座敷に二十代ぐらいの女性が来て倒れたのだ。
    一緒に行動をしていた女性二人が驚いていて座敷間違えて、とか倒れたとか言っていて清次郎もあわてていたが心平が素早く動いて熱中症だと告げた。
    百閒の動きも早く意識を確認してから座敷にあげすぐに店員に指示を出し袋に入った氷を持ってきてもらった。
    意識がなかったので救急車も呼んでもらうことにした。

    「何人かが熱中症になっていて、救急車を呼んだり、応急処置をしていた」

    「親子連れの子供とか、会社員の人とかも熱中症になっていたもんね。落ち着いたころに図書館に電話をしたんだけど」

    「橙髪が、迎えよこせる? フルーツサンドは無事みたいだけど潰されそうになったとか言っていたし、場が混乱していたようだからな」

    「倒れた女が草野の声に反応しなかったし、他の者も声には反応していたが病院に行けというぐらいだった。……迎えか。橙髪は心配をしすぎだ」

    「念のためだと想うよ。百閒さんも旅行の時間が遅れたし」

    「俺の方は夕方までに付けば問題はない」

    橙髪の司書は本館の司書だ。図書館に連絡をしておいたのは時間までに早めに帰るとして置いたのだが、帰られない可能性が出てきたからであるし
    連絡は一応は入れておこうとして置いたからだ。三人はようやく昼食にありつけたようだ。

    「図書館の方はどうなんだ」

    「利用客が倒れていたので休ませていた」

    「おのれ……夏……夏将軍と名付けよう。災害ではないか」

    「危ないよね」

    心平がおにぎりを食べ続けているし清次郎は鳥五目のおにぎりを食べていた。確かにこの夏は災害である。

    「小泉の誕生日パーティは夜だし、帰りたいところだが、午後の予定が潰れたな」

    「町の案内は今度でいいよ。みんなで行こうね。おいらはフルーツサンドを届けに先に帰るから清次郎君は斎藤さんと一緒に帰ればいいよ」

    「俺も旅行に出よう。ここの食事は美味であった」

    午後の予定としては町の散策があったらしい。心平は引き取ってきたフルーツサンドが入った袋や荷物を手早く持ち、ごちそうさまをしていた。
    百閒も旅行鞄を持つ。二人は代金を払うと店を出た。休業中の店には店員や茂吉や清次郎が残された。

    「……来てくれたのはありがたいが吃驚した」

    「すまない。心配だったんだ。未明君も心配していた」

    「おにぎりは頼んでおけ。来たのだから」

    「ああ。また世話になる」

    梅雨が明けて、いきなり騒動に巻き込まれてしまった清次郎ではあったが乗り切っていた。茂吉に水が出される。彼も水分補給は大事にしていた。
    いくつか注文をしておく。

    「夏は気を付けて過ごさないと死んでしまう……比喩ではない。事実として」

    「そうだな。お互いに体調には気を付けよう。……夜までには戻るとして、どこへ行こうか」

    「好きでいい」

    茂吉が来てくれたことに清次郎は照れながらも、鳥五目のおにぎりを食べ終わる。安堵感が心を満たしていた。
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