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    秋月蓮華

    @akirenge

    物書きの何かを置きたいなと想う

    当初はR-18の練習を置いてくつもりだったが
    置いていたこともあるが今はログ置き場である
    置いてない奴があったら単に忘れているだけ

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    秋月蓮華

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    ありしまさんとはくちょうさんがのんびりかいわをするはなし
    最後には童話組もいる

    対抗方法【対抗方法】

    帝国図書館はとても広い敷地をしている。
    図書館階の建物でも現在は閲覧専門の図書館である本館、近代文学を研究しているという名目である分館、本の貸し出しが出来る通称、閲覧館があるし、
    所属している者たちが住んでいる宿舎や他にも建物がある。

    「岩野さんが僕に秋服を見せてきたんだ。ジャケットにアイアムゴッドと書かれていて」

    「……奴らしいな」

    分館にある飲食室にて、正宗白鳥は書き物をしていた。飲食室は分館の中で数少ない飲食ができる部屋だ。
    そこに有島武郎がやって来て、政宗に話しかけた。話題は岩野泡鳴についてだ。彼は秋服を手に入れたのだが、服を有島に自慢したらしい。
    アイアムゴッド。私は神ですという意味であるが泡鳴ならば名乗るだろうなとはなる。泡鳴だからだ。
    何かしろ有島に対してライバル視をしてくる。

    「困っていたら、夢野さんが来てね。僕が困っていると言ってくれたんだけれども、何故か僕は岩野さんにお前も神になればいいってすすめられたんだ」

    白鳥は原稿用紙に執筆をしていたが、その手を止めた。

    「日本は確かに神になることは簡単ではあるが、自称神ならば何人もいるとはいえ」

    「すすめられても、困ったよ」

    夢野久作が咎めたようだがその時の会話で泡鳴は有島にも神になればいいと進めてきたようだ。
    一神教と違い多神教で、しかも神道だと神になることは非常に簡単である。名乗ればいい。夢野も夢野で変わった者ではあるが、
    帝国図書館に変わっていない者はいないとは白鳥は結論付けている。それを言えば、怒る者は怒るので面倒なので言わないだけだ。

    「泡鳴は放っておけ。何かあれば夢野が簀巻きにするだろう」

    「それで処置が分かるというのも、僕もこの図書館のルールに慣れている」

    泡鳴はクリスマスツリーに短冊をぶら下げようぜとかやって実行をしたり、派手な鯉のぼりを出そうぜと出したりする文豪だ。
    行事を大事にしているのはいいが、方向性に問題がある。夢野も夢野で変わっているし、サイコパスなところがあるが彼なりの図書館への矜持があり、泡鳴は簡単にそれを
    壊してしまうので夢野はそれを見つける度に撤去したり、泡鳴を簀巻きにしているところはある。

    「僕が神になればいいという話を弴にしたら、弴は困ったような顔をしていたけれど」

    「それは困るだろう。特にお前がお前だ」

    「――そうだね。ところで、貴方は何を書いて」

    里見弴は有島の弟だ。名字は違うが家庭の事情である。
    白鳥は深くは話さなかったが有島自身が有島自身だからそれは困るということを伝えておいた。有島には昔のことがある。特に死因が死因だ。
    察した有島は納得をしつつも、白鳥の執筆作業を気にした。
    白鳥は机の上に置いてあるチラシを有島に渡す。

    「これのパンフレットの執筆だ」

    「コーヒーストリート……」

    「三連休があるだろう。近所の商店街で行われる。うちも出るぞ」

    「確かにブックカフェをしているし、水出しコーヒーは美味しいと評判だね」

    チラシにはコーヒーストリートとあった。
    現在は九月終わりに近い。一年がどんどん過ぎていくとなりながらも、白鳥は淹れておいたマグカップの中のコーヒーを飲む。
    コーヒーストリートは商店街のイベントだ。コーヒーをメインに各地の自家焙煎の店やカフェが店を出す。
    帝国図書館は今年から本格的にブックカフェを始めたし、有島も店員として手伝っている。店はコーヒーだと水出しコーヒーをメインに出していた。
    水出しコーヒーは挽いたコーヒーを水につけて出すコーヒーだ。帝国図書館には大きな水出しコーヒーを出す器具があり、それで作っている。

    「俺のコーヒーの評価が適格だと言われて依頼が来た。名を伏せて書いている」

    「嬉しがっているね」

    「そう見えるか」

    「見えるよ」

    有島は正直に答える。
    コーヒーストリートに出る店のガイド、店にはこれがオススメというコーヒー豆を出してもらって、白鳥が評価をするというものだ。
    店は選ばれるだけありどれもおいしい。

    「期日までには書き上げないといけないが」

    「貴方の書く仕事。だね。報酬はコーヒー豆かい」

    「いくらかは貰ったがそれも依頼料に入っている」

    「おすすめを飲んでみたいな」

    白鳥はコーヒーに煩いが、コーヒーの評価は的確だ。
    貰ったコーヒー豆の中でも特に美味しいものを有島は飲んでみたいとも想い、白鳥に尋ねてみる。

    「書き終わったら淹れる」

    「ありがとう」

    白鳥は執筆スピードを速めようとしたが、そこに足音が聞こえてきた。扉が開いた。二人、部屋に入ってくる。

    「どうしよう。ロビーに飾ってあった皿を割っちゃった」

    「隠さなきゃ!!」

    鈴木三重吉と新美南吉である。白鳥は執筆の手を止め、有島はあの皿……と思い浮かべていた。
    ロビーと言うのは本館ロビーだ。たまに置いてあるものを変えるのだが、最近は倉庫にあったそれなりの値段のする皿を置いておいていたのだが、
    遊んでいるうちに割ってしまったらしい。

    「――隠すな」

    「隠し事は駄目だよ。一緒に謝ってあげるから」

    「「あ」」

    三重吉と南吉はようやく部屋にいる白鳥と有島に気が付く。白鳥と有島は南吉と三重吉をとがめつつ、フォローをすることにした。


    【Fin】
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