nameless...(💛side)ある日の夏期講習。別に約束していたわけでもないが、タイミングよく落ち合えたのでおれはアイクと下校することにした。
とりとめのない話をしながら、ふと隣を見る。
彼の青がかったグレーの髪の毛と同色の長いまつ毛は、夏の日差しを受けキラキラと透き通って見える。
綺麗だな……ずっと見ていられる。
一緒に下校できるだけで、心が跳ねるようだ。
―――よそ見をしていた自分が悪いとはいえ、足元にセミが暴れているとは思わなかった。
うわっ、と反射的に一歩下がる。アイクと目が合ってしまった。彼はなんの抵抗もなくそれをひょいと捕まえ、草むらへ逃した。
「ルカって、虫が苦手だよね」
彼はそう言ってふふっと笑った。
……流石に普段はセミに驚くことはない。
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