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    aa10lv

    @aa10lv

    主に習作、あらすじやプロット状態のネタ供養などと、感想とかもろもろ置いてます。
    カップリング二次ではタグをつけています。
    ネタバレ?、女体化とかパロとか特殊っぽいものはワンクッション入れます。
    ※※女体化は特筆ない場合は基本的に、先天性女体化(そのキャラが最初から女として生まれた性別パラレル)です。

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    aa10lv

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    ハッピーバレンタイン穂荒。とっくに付き合ってるタイプの穂荒。
    ほかりさんがだいぶお祭り野郎です。願望です。ボーダー隊員としてはストイックでありつつ日常はそれなりに高校生らしくキャッキャウフフ楽しんでほしい。

    ##穂荒

    +++

    「さて、バレンタインだな。今度の祭りは」
     任務が入って家での豆まきはできないのだと悔しがっていた節分当日。任務明けの夜食用にと買っておいた恵方巻きを、きっちり恵方を向き黙って丸かぶりで食べ終えると、満足げに口を拭いながら穂刈は荒船に向き直った。
     荒船も穂刈に倣って恵方巻きを食べたが、帰れば寝るだけだからとハーフサイズを選んでいたため既に食べ終わって報告書をまとめていた。ちなみにほかのふたりは任務を終えるや否や巻き込まれまいと早々に帰っている。
     穂刈は祭りが好きだ。法被と御輿の伝統的な祭りはもちろん、いわゆる季節のイベントや祝い事も「祭り」の一種と捉え、乗れるだけ乗っかって楽しむタイプだ。それなりに濃くも長い付き合いになってきた荒船にもその習性は影響しており、イベントにあわせた映画を進んで持ち込んだりすることもある。忙しい日々だが楽しめることは多いほうがいい。
     が、それはそれとして。荒船はペンを止めると、苦い顔を穂刈に向ける。
    「まさかとは思うが、またチョコ買いに行くのか?」
    「見事なチョコの祭りだったなあれは。バレンタインというよりは」
    「俺はもう付き合わねーからな。去年で懲りたぞ」
    「祭りの華だぞ、人混みも」
    「あれはそんなレベルじゃねぇだろ……」
     心なしか顔色を悪くして思い返すのは去年のバレンタインのことだ。ヨーロッパのチョコの祭典が三門近くでも開催されると聞きつけた穂刈に誘われ、ふたりで電車を乗り継ぎ会場となるデパートへ赴き、それはさんざんな目に遭った。
     スーパーのタイムセールを彷彿とさせるような女たちの気迫に呑まれ物理的にももみくちゃにされた。疲れた身体に会場限定のチョコアイスは染み入るほど旨かったが、著しいマイナスの印象を打ち消すほどのものではない。
    「去年は間違えたからな下調べを。あれは玄人のスケジュールだ。大丈夫だ今年は」
    「また行くのか……?」
    「来なくていいぞ、キツいなら。珍しいアイスが出るらしくてな」
     穂刈が言うにはチョコレートブランドの会場限定イートイン商品ではなく、地方のアイスメーカーがチョコアイスメインにして出展しに来るらしい。
     バレンタインの数日前にはかわいい後輩の誕生日があり、今年はそれを穂刈からのプレゼントにする予定とのことだ。
     半崎の誕生日祝いは加賀美も交えて決めなくてはならないので、今は話は進めない。
    「そうか。じゃあ楽しんで来いよ」
    「おう」
     そう言って、その日は終わりだったのだが。


    「ハッピーバレンタインだ、荒船」
     バレンタイン当日、作戦室に着いて、差し出されたのはなんと手作りチョコだった。
    「いろいろ考えたんだ。起源を重視するとか、外国に倣うとか。だがやめた。ここは日本だからな」
    「それで、今年は『友チョコ』か?」
    「ああ」
     じゅうじゅうと、鉄板で生地や具材の焼かれるいい音がする。
     穂刈が作ったのはガトーショコラだった。ほとんど自由登校になっている学校で配ってから本部へ来たらしい。作戦室やラウンジで、小さく切って袋に入った焼き菓子を配ったり、同じようにチョコを用意した相手と交換したりしていたのは荒船も隣で横目に見た。
     そしてひととおりの訓練や作戦会議を済ませ加賀美や半崎と解散すると、荒船は「かげうら」に連れて来られた。
    「本命だからな。好物がいいだろうチョコよりも」
     ということで今日は穂刈の奢りだという。
     友チョコを配る傍ら、ふたりの関係を知る者には「荒船は何をもらったんだ?」などと揶揄されることもあった。うるせーよと一蹴していた荒船だが、「秘密だ」などと答えるのを聞いていたため僅かながらに期待もしたのだ。
     それがいつもの店で奢りとは。確かにチョコ菓子よりもお好み焼きのほうがよほど旨いと思うものの、曲がりなりにも思春期男子としては、釈然としないものもある。
    「友チョコのほうが手間がかかってないか?」
    「手作りだろうこれも」
     用意された生野菜や生地を焼いて仕上げる。確かに「手作り」と言えないこともない。ガトーショコラも市販のキットを使ったものらしく「手作り度」としては大差ないというのが穂刈の主張だった。
    「いつもと変わんねぇじゃねーか。ありがたみが薄いな」
    「逆だぞそれは」
    「あん?」
    「いつも籠ってるんだ、愛情が」
     焼けた生地をひっくり返した穂刈が、ヘラを両手に真顔で告げる。
    「……うぜぇ」
     数秒固まった荒船はじわじわと耳を赤くして、机の下で穂刈の脚を蹴りつけた。
     なかなか痛かったが、照れながら歪めた表情はいつも通りかわいかったので穂刈は文句を言わずに手を動かす。
    「ソースとマヨネーズかけるぞ」
    「……おう」
     じゅう、と、生地からこぼれたソースが音を立てて焦げる。チョコレートなんかよりもよほど好ましく、「特別」ではなく、よく馴染む匂い。それがかえって自分たちの関係のようで、悪くないなと思いながら、切り分けたお好み焼きを受け取った。いつも通りの、よく馴染んだ、大好きなものの味がした。
     お返しはホワイトデーに贈るのが筋だし、穂刈もそのほうが喜ぶだろう。それでも今日、帰り道でキスくらいはしてやろう。
     チョコレートこそ用意してないがそうでもしないと気が済まない程度には、荒船も穂刈のことが好きなのだ。
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