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    れんこん

    @goma_hlos

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    れんこん

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    8章を経てのラブラブグレビリです

    #グレビリ
    greebilli

    ……最近、グレイからの視線を特に感じる。
    ちらり、ちらりと伺うような目線。
    そして、その目線に気付いている自分も明確に彼の事を意識している。
    どき、どき、とほんの少しだけ高鳴るのは、その視線が明らかに熱を帯びているから。

     ほんの少し前、なんでもない晴天の日。ただキミと馴染みのイーストセクターの海辺を散歩して、彼の相棒とも散々戯れて。沢山笑って、お喋りをして。少しだけはしゃぎ疲れて、少しだけ背の高い「ともだち」の肩に頭を乗せる。長めの襟足が頬に触れて、ほんの少しくすぐったい。
     空の色がきれいなオレンジと、紺を孕む時間になった頃、ぽつりと隣から漏れ出た音に、しんぞうがきゅ、と鳴った。

    「……すき、だなぁ…。」

     たった一言のその言葉。それも伝えるのを意図としないような溢れ出た言葉。
    元々真実しか語れないその小さめの口は、今はその発してしまった言葉を体内に戻しでもするかのように、大きめの手で塞がれていた。
     顔は、真っ赤。
    はわ、はわ、と空気が抜けるみたいな音が漏れ出て、グレイは突然ごめん!なんて言って、オイラがもたれかかっているのに離れようとする。
     ……そんなの、逃すはずないでしょ?unable to escape⭐︎なんてエヘヘと笑ってちょっとだけ糸を指先から出して、その細身の腕に絡める。
     少しだけじたばたと暴れていたグレイもさすがに大人しくなって、その今にも泣きそうな顔を両手で覆った。……あぁ、この好意が、素直な気持ちが、今はとても気持ちイイ。

    「……オイラも、スキだヨ。」
    「………っ……!」

     シンプルな言葉にいちいちわかりやすく動揺する様は、相変わらず6つ歳上には見えなくって、ふふふとつい口元が緩む。
     当たり前みたいな本当の事を言うだけで、こんなにキミも俺もドキドキしちゃうんだ、なんとなく異世界のひとの一部になれたみたいで、擽ったい。
     あぁ、またこういうことは直接話さなくちゃ、と思ってゴーグルに手をかけると、突然大きな手が伸びてきて、それを阻止してきた。



    ****


    「……ここ、は……他にも人が居るし……。その、……」

     ぐだぐだと上手くない言い訳を並べる自分は、相変わらずスマートさなんてなくってかっこがつかない。明らかな不似合いなのではと思いたくなるみたいな返答に、勿体なさみたいなものを感じてしまい咄嗟にその手を遮った。「自分だけに赦されたその貴重な青空色の瞳を他の有象無象には見せたくないんだろ」と心の奥底深くで恥ずかしい本音が喋る。
     目の前の好きな子の照れたみたいにほんの少しだけ染まった頬に、信じてるけど信じる事が赦されるのか、こんなしあわせが。なんてついつい天を仰ぐと、深く紺色に染まり始めた空の一番星と目が合う。……ああ、君の瞳みたいだな、なんて自分には似つかわしくないみたいな比喩が浮かんで慌てて視線を下げると、今度は海辺をバックに夕焼けと同じ色をした髪の毛が、潮風でふわりと揺れる。

    「すき……。」

     あぁ、また抑えきれないものが溢れ出る。
     最近はゲームでの荒いプレイだって見直して、苦手な掃除だってなるべく頑張って、いろいろ改善しようと努力しているのに、この恥ずかしい本音を吐露してしまう癖はまだまだ治せそうにない。
    それを、はじめての子が愛おしそうにありがとうと優しい声色に乗せる。信じているのに、信じたら幸せすぎてこの後最大の不幸がやってくるんじゃないか、なんて必要のない恐怖に駆られる。
     ……君は、ホントに僕が好き……?
    わかってるのにわからない。嘘をつくの、思っているより得意じゃないんだよと言われたけれど、僕よりは上手だ。だから、その答えは本当は必要はなくて、僕がビリーくんを好きな事実がこの胸のうちにあるだけで、それだけで良い。

     曖昧に閉じた言葉は風に攫われて砂の上をさらりと撫でていく。
     その砂の上に、真っ赤になって汗ばんだ手を下ろすと、夕方の少し涼しい風が吹き抜けて。
     ……そして、そこにふわりと優しい暖かさが重なる。

    「……!ビリー、くん……。」
    「えへ、あったかいネ。」

     白く、日に晒されてない肌が目に眩しい。
     ……普段真っ黒な手袋を欠かさないその細身の手が、僕の手に重ねられて……!
    汗がさらにぶわわと吹き出してしまった気がして、ごめん、と焦って呟くけれど、その手を振り払うことは死んでもできない。
     嬉しそうに少しだけ小さな手で僕の指と指の間に細い指先を絡めてきて。
    それだけで、きみの全て、伝わってしまった気がして。

    ……あれから、僕たちは……。







     関係性に加えられた、はじめての「恋人」と名づけられたそれは、むずむずとしてどうも馴染まなくて。気恥ずかしくて、でも浮かれてしまって。
     ビリーくんはあの時から、部屋ではゴーグルを外して生活をするようになった。
     相変わらず眠る時のアイマスクは欠かさないけれど、時折会話のたびにちらりと向けられる幼い瞳には沢山の感情が乗っている。
     2人で買ったソファーに座って、オススメのゲームを2人でプレイして。時折ちらりとこちらを向けられる目線にどきりとして得意なはずのコンボを外す。
    負けてしまっても楽しいねと語る恋人に、心がふわり、ふわりと浮き足立つ。
    ……どうしよう、「恋人」のビリーくんは……本当にかわいい。

     潔癖の気があると本人に告白されてからというもの、ビリーくんが触れるもの、ひとつひとつが気になって。あの日、海辺で手を重ねた時以来、ビリーくんとの肌の触れ合いは無くて。
     それでも、時折隣に座った時にぶつかる肩や、身体に、手袋越しでもその腕に引かれるとドキリとした。
     ……ビリーくんの嫌なことはしたくない。これだけで、ともだちな上に恋人だなんて、そんな言葉をかけてくれたことだけで……。そうして満たそうとした胸は、ほんの少しだけ隙間がある……そんなことに目を向けてしまったのはほんの運命の悪戯。

     ……2人で仲良く並んで見ていた、バディものの刑事ドラマ。ふと、録画が間違っていたのか、突然流れたのはあまり耐性のないメロドラマ。慌てて止めようと思ったら、ビリーくんから折角だから一緒に見ようと誘われた。
     沢山のアニメや漫画やゲームをするけれど、普段から恋愛をテーマにしたものはさほど摂取してこなかった。ビリーくんはどうなの、と尋ねると、情報屋のビリー・ワイズはメディアにも詳しいっね言ったデショ?と得意げに言われた。
    その様子に、歳上の恋人としては少し焦りを覚えつつも、なるべく平然を装って画面を追う。

     身分違いの恋、許されないのに求めてしまう若い男女。当たり前のように何度も交わされる濃厚な交わり合い。いちいち密着するその関わり合いに……それも恋人と隣り合って見ていると言う事実に元々大人しくはなかった心臓が更に跳ねる。
     隣のビリーくんは、というと。
    ただその、分厚くくっきりしたまつ毛で覆われた大きな大きな目に画面を映して、黙々とその様子に見入っているようだった。もう僕はビリーくんに見惚れて、あまり話が頭に入ってきてないけれど、盛り上がる音楽的に、クライマックスのシーンなんなろう。
     画面の中の恋人たちは、最後の最後に感極まって、何度も何度もその唇を交わし合う。

    ……キス。

     ビリーくんとは……恋人といえど、そういう交わり合いはきっと出来ないのだろうと、そう思っていた。そんなのがなくても僕たちは大丈夫だから……。そう、何度も言い聞かせて、恥ずかしいくらい素直にむくむくと大きくなっていく年相応の欲をやり過ごしてきたのに……。
     やっぱり、少しだけ憧れが募る。
    好きな人の、だいすきな子の唇は、どんなに柔らかくて、そして触れ合いはどれだけ幸福になれるのかと。あれだけ蕩けたように、感極まるように交わるほど、良いものなのだと、そう何度も見せつけらたら、変に緊張してきて唇が乾いてきた。
     どうしよう、そういうのがきっと苦手だろうビリーくんの隣でこんなやましいことを………と考えると、その事象自体にも顔がぽっぽと熱くなっていく。

    「……グレイ。」
    「ヒィッ!?」

     どうしようもない自分に後ろめたさを感じてどうしようかと思っていたら、突然ビリーくんから名前を呼ばれてびくりと肩が震えた。
     ……そして、その表情を見て、息が止まりそうになった。
     いつもよりさらにきらきらと輝く瞳が、こちらを真っ直ぐ見据えている。ほんの少しなにかに揺れるような、頬がほんのすこしだけ染まっているような……そんな、僕からしたらどうしようもない表情。……神様……とついまた癖のように天を仰ぎそうになるほどかわいくて、死因:恋人がかわいくて心臓が止まった、なんてことになりそうだと馬鹿なことが頭をよぎる。今天を仰いだところで見慣れたふたりの部屋の天井しか目に入らないのだけれど。

    「グレイ……、おれ、その……。」
    「ま、まって……、ちょっと待って……もう少し落ち着く……から……っ…。」

     どきどき
    まるでその音がビリーくんに聴こえてしまうくらいに心臓が騒がしい。
    この雰囲気って、それって、もしかして。
     人生初のシチュエーションに、動揺が止まらない。うう、でも、ビリーくんは、潔癖なところがあって、ひとの手作りを口にするのも苦手な方だって……僕、僕、汚くないかな、あ、歯磨き………はさっきしてきたばかりでよかった、でも……!今日はふたりでまたお気に入りの中華のお店でラクダのコブを食べてきたから、独特のにおいがまだ残っていたりして………、

    「……キス、して、グレイ……」
    「はわ……っ、」
    「……だめ?」

     あたふたとしていると、ビリーくんの手が僕のスウェットの袖をきゅっと握って来ていて、逃げられないのを確信した。いや、こんなにオイシイ状況、逃げるつもりはさらさらないのだけれど。
     つん、と艶やかな唇をこちらに差し出してくる様は、何もかもはじめての僕には刺激が強すぎて、つい目を閉じたくなってしまうけれど、その恋人の全てを見ておきたいという気持ちがそれを押しとどめた。

     ビリーくんが僕で大丈夫なのかなとか、そんなにかわいくて大丈夫かなとかいろいろ不安はあれど、いざ勇気を振り絞ってビリーくんにしっかり向き直って……そこで気づく。

    ……どうやって、すればいいんだろう。

     あれだけ画面では何度も慣れたように交わされていたそれの、やり方が……全くわからない。
     ただ、唇を触れ合わせる、だけ?加減はどんな風に……、手、手はどこにあるのが正しいんだっけ?目は閉じるんだっけ、閉じるならいつ閉じるんだろう、最初からだと目測を誤ってぶつかりそうだし……、なんて新たに次々と浮かぶ戸惑い。
     ああ、ビリーくんが「はじめて」だと聞くと嬉しかったのに、自分の「はじめて」は洒落にならない。

    「ぷっ……、グレイ、全部口に出ちゃってるヨ。」
    「ぇ、…っえ!?うわぁ!?ごごごごめんね、気持ち悪くて……その、情けなくて……」
    「違うヨ、グレイ。それは『かわいい』って言うの。」
    「へ、……ぁ、」

     するするとビリーくんの腕がこちらに伸びて来て、ふわりと包まれる。
     柔らかな甘い砂糖菓子みたいな香りがしたかと思うと……唇にこの世でいちばんやわらかい感触。
     あたたかくて、心地が良くて。
    それは、ビリーくんと出会ってから感じていたものと、おんなじものだった。
     驚きすぎて閉じるのを忘れた目が、目の前の至近距離で重たいまつ毛を捉えて、ハッとして目を閉じる。相変わらずこの手持ち無沙汰な無駄にヒョロ長い腕をどこに置いていいかわからず、ただ空を無意味にわきわきと漂わせてしまう……
     あまくはないはずなのに甘さが触れているところから広がっていくようで。……はぁ、しあわせの味って、こんな味なんだ。
     しばらくふにふにと唇でその形を確かめ合うみたいに押し付けあった後、ちゅ、と小さくかわいい音を立てて……その幸福な触れ合いが一旦途切れた。
     少し離れてしっかり見たビリーくんの顔は……、

    「………。」
    「……、グレイ?」
    「はぁ……、」
    「グレイ!?」

     ひゅう、と霧の中みたいに真っ白になる視界。
    幸せすぎて多分天国に行っちゃったんだ。
    青と赤のコントラストが、あの日の海辺の夕焼けが焼き付いて、そのまま僕は目を閉じた。




    *****



    「よっ……と、」

     つけっぱなしだった録画していたメロドラマを消して、お供に一緒に食べていた甘いものを片付けて、一通りきれいに掃除をして一息。
     のぼせてしまったのか、ソファに倒れ込んでしまったグレイの頭に濡らしたハンカチを乗せて、そしてそのふわふわの髪の毛の頭を自分の膝に乗せた。自分のうすっぺらい太ももなんて、きっと居心地は良くないのだろうけれど、これは俺の我儘。

    ……録画、ホントは間違えてなんかなかったのを言わなかったの……嘘になっちゃうのかな。

     いつもの日課の情報収集中に見つけた、純愛で評判の……キスシーンがたっぷりのメロドラマ。
    有名なタイトルだからとりあえず見たことはあったそれに、別に今まではなんとも思わなかったのだけれど。
    ……グレイの隣で見るそれは、まるで一色の視界に色が一気についたみたいに…鮮やかに映った。セリフも仕草も、音楽も。全てが鮮やかで……そしてキミとなら。

    思い出すように、自分のじゃないみたいにふわふわする唇を……ゆっくりと手袋を外した手でなぞって、自分の中で抱きしめた。普段は塗らないのに、今日だけ丁寧に塗ったリップクリームは、キミの好きなケーキの砂糖の味。
    幸せそうに眠るみたいに目を閉じた恋人兼ともだちの鼻先に、ひとつだけ、ナイショのキスをした。
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    Replies from the creator

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    ゆりな

    PROGRESS予定が合わないグレビリ ビリーくんが好き。
     こんな僕を、友達だって言ってくれて、大好きだって言ってくれる。
     こんな僕を、特別だって言って、恋人だって言ってくれる。
     こんな僕を抱きしめて、キスだって、その先だってしてくれる。
     ビリーくん、ビリーくん大好き。
     
     
     今日の任務が終わった。明日はビリーくんとデート。
     今日はまだ情報屋の仕事があるみたいで、パソコンと睨めっこしてる。ムムムム…って時々唸ったり首を捻る姿が可愛くて、そんな後ろ姿が愛おしい。
     ゲームにもあまり集中できなくなってきた。テレビゲームはもう辞めて、今日はスマホのゲームにしようかな…。
     
     ソファに移動して、スマホをいじる。育成ゲーだとか癒やしゲーだとか言われる類で、画面から目を離しても大丈夫。明日のことを考えたり、横目にビリーくんを見てはニヤニヤしてしまう。
     
     いつ見てもビリーくんはパソコンと睨めっこしていて、ちょっと心配になってきた。目とか疲れてないかな…。
     蒸しタオルを作ってあげようかな、と思ったところで、急にビリーくんが立ち上がった。
     
    「うわーん!ごめんねグレイ!明日のデート行けなくなっちゃった…また次のオフで 5303

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