階段を上がらせたかった(希望) カバネは、暖炉の前の椅子に座り、険しい顔で考え事をしていた。その表情は傍からは敵の陣地への攻め込み方、或いは政治の執り方を考えているようなものに見え、クオンとコノエはカバネが何か企んでいるんじゃないかと心配した。だが、実際にカバネの頭の中にあるのは、そのような事ではなかった。
──そろそろ、次の段階に進むべきときではないか。
次の段階、というのはヴィダとの事である。
恋人であるヴィダとは、もうかれこれ1年以上前から付き合いだし、プロポーズしたり、指輪のプレゼントをして貰ったりした。
だが、残念ながら。(第三者的にも)非常に残念なことながら。
二人には、まだ体の関係がなかった。
とはいえ、完全なゼロではない。キスはした事があるし、眠る時には(カバネが無理やり)手を繋いで寝たりしている。完全なゼロではない。が、裸の付き合いは、ゼロである。メタ発言を恐れずに言うのならば、早くしろよ、と言う感じである。
そんなわけで、カバネは(クオンとコノエに悩みがあるなら聞くと言われながら)色々と考えた挙句、次の段階──体の関係へと進めるべく、その日の夜、ヴィダを組み敷いた。
ちなみに、現在カバネは裸である。何故かと言うと、こうして組み敷くまでの間に散々抵抗され(恋人同士なのに何故だ)、服は服の形をしていない、ただの布切れになってしまったからだ。
それでも何とか組み敷くことに成功したカバネを見て、ヴィダは「はっ」と笑った。
「必死かよ」
「嫌なら俺を切り刻んでる間に逃げられただろう。なんで切り刻んだ」
「遊び?」
「人を遊びで切り刻むな馬鹿」
そう言うと、今度は右耳が切り取られたのでカバネはヴィダにキスを落とした。
「次からは切った分だけキスするからな」
「何だそれ。意味わかんねぇ」
「まぁ、遊びだ遊び」
そんなことを言いながら、ヴィダの上着に手をかける。まず、口元を半分隠しているチャックに右手をかける。すると、その手を吹っ飛ばされたのでカバネはまたキスを落とした。
「キスされたいようだな?」
「ちっげーし!反発すんのって楽しいだろ」
「俺は痛いけどな」
仕方が無いので左手でヴィダのチャックを下ろし、その下のインナーに手をかける。今度は左手が飛ぶ。またキスを落とす。結果的に両手を吹っ飛ばしたから、お仕置だな、と再生したばかりの右手でヴィダの頭を抑え、今度は少し深くしてやる。
「んぐぅぅ」
「んっ、息をしろ」
「はっ、テ、メェッ、長すぎ、んだよ!!!」
少しのつもりが長くなりすぎてしまった。結果、左耳をちぎり取られた。じゃあ今度は、とヴィダの左耳のノイズキャンセラーの下に手を入れ、左耳を塞ぎ、そのまままた深いキスをした。
それが気に入らなかったのか、凄い力で右耳をちぎり取られたので、右耳も塞いでやると、ヴィダの息が荒くなったのがわかった。
「んぅ、」
「・・・・・・っ、」