赤ツ鹿探索、其の思索盛夏の候。時刻は深夜、丑三つ時。
術を用い、目覚めて直ぐに知覚した情報は其れだった。書物を読んでいた筈なのに、何時の間やら眠りについていたらしい。何か、夢を見ていた様な気がするが……その内容は明確には思い出せない。たしか、読んでいた書物の世界観を引き継いだ様な夢であったような……。此れ以上は思い出せない。うたた寝同然の睡眠を取ってしまったので、その記憶は碌に保持されず、起きた衝撃に追われて消え去ったのだろう。やはり少しでも眠気を感じ始めた時点で寝所に移るべきだったか。
さて、それは兎も角として妙な時間に目を覚ましてしまった。差し当たって術を用い、視界の補助をさせる。これで辺りに光源が無くとも、日の出ている頃同然に周囲を見渡す事ができる。
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