【祓本夏五】悪い夢 見慣れた後姿があった。しかしどこか違和感がある。
無造作に遊んでいる白銀の髪が、きっちり短く切り揃えられきっちり整っている。そしてらしくないスーツを着ていた。お決まりのステージ衣装となっている、黒の上下ではなくて、なんというだったか…そう、いわゆるリクルートスーツ。
「悟…?」
半信半疑でその名前を口にする。間違いなく彼だと思うと同時に、まったくの他人のようにも思えて、なんとも奇妙な感覚だった。
声が小さかったせいなのか、彼が振り向くことはなかった。それがなぜか拒絶されているように思えて、焦りが浮かぶ。
「悟、」
さっきよりも大きな声で呼び、同時に何かに突き動かされるように走り寄る。今度は気づいてもらえたようで、ゆっくりとこちらを見た。
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