ある「元」光の戦士の6.01その13 ふわり、とシナモンの香りが漂う。そのなかに混ざる香ばしさはメープルシュガーだろうか。もちろん酸味を含んだフェアリーアップルも感じられる。
「わぁ~っ」
満面の笑みのリーンがかわいい。フィーネはよそ見しすぎてうっかり火傷した。
「どうしたんですか?」
顔をゆがめたのを気づかれるが、フィーネは強がった。
「なんでもないよっさあ、食べようか」
ナイフを取ったフィーネだが、リーンに奪われる。
「わたし切り分けますね」
「え」
「あぶないから……」
「もうアクロバットしないから」
しばし、笑顔でナイフをつかむ二人が見つめ合う。
「大丈夫です」
「リーン。よくないと思うな」
「ちょっと何言ってるかわからないです」
「一体誰に似たんだい、その強情さは」
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