揺れる水風の音が唸る
巻き上がった砂粒が町を覆う
窓を強く揺らし、灯りに暗闇を叩きつける
やけに静かな黒い景色に目を凝らす
この日は昼間だというのにやけに気温がぬるかった。
カーラジオは悪天候の予報を伝え、一行は早めに宿に落ち着いた。
「えらい砂嵐やんか。こらぁ明日は足止めやな」
ジャケットを脱いで砂を払い、サングラスは外してサイドボードに。
休む支度を整えたウルフウッドは、真っ暗に烟る窓の外を虚ろに眺めるヴァッシュに声を掛けた。
「なんやボーッとして。あんま窓んとこおったら危ないで」
「うん」
ヴァッシュもコートを脱いでホルスターを外し、身軽な姿で窓の前に立っている。
ヴァッシュは室内でも夜でもカラーグラスを極力外さない。
カラーグラスに遮られた瞳が窓に映り、その色を伺うことはできない。
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