お薬(君がもらったもの) ギノが風邪をひいた。熱はそれほどないが、身体がだるく頭もぼうっとするという。彼がそんな理由で仕事を休むのは珍しいことだったので、上司である花城は「あなた、早く行ってやりなさいよ」と勝手に俺の休暇を申請して、行動課のオフィスから送り出した。そして「風邪が移ることも考慮して三日ほど休みにしとくわ」と扉越しに笑った。俺は自分の時との差に愕然としながらも、ぼんやりと官舎に続く廊下を歩いた。するとどこで何を聞きつけたのか、俺の知らない顔をした男女が「宜野座さんにゆっくりなさるようお伝えください」だの何だの、りんごやオレンジ、ミネラルウォーターやレトルト食品などを俺に押し付けて去っていった。というわけで、俺が官舎のギノの部屋に入る頃には両手がものでいっぱいだったのだが、これは一体、どういうことなんだろう。財宝でも手に入れたみたいだ。もっとも、それは俺のものではないのだが。
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