アナタと、ワタシと彼女。.
カフェを出てすぐ、私は少し後悔していた。
なぜなら、この後の予定など全く考えずに口走ってしまったからだった。
私としたことが、こんなに動揺ばかりして、らしくない。
しかも、先程のカフェでのわたしの言葉はまるで告白しているようなもの。
まだ、ヴィンセントが、そういうことに"疎い“事は理解していたから、まだよかったのだけれど。
それはつまり、逆に本当の意味で告白しないと伝わらないという事でもあるのだ。
「シェルク、もしお前に行く所が決まってないのなら、寄りたい所があるんだが…どうだ?」
先程、もう解散でいいのかと尋ねてきた彼にしては、150°くらい話の流れが変わっていることに不思議に思いながらも、私はヴィンセントの提案に頷いた。
どうも、なにか思い出した様だった。
黙ってヴィンセントの後ろをついて歩く。
流石に、脚の長いヴィンセントに歩幅を合わせてもらう事は体格差のありすぎる私には申し訳ないのもあって、そういうカタチを取っている。
多分、今も多少合わせてくれているのだろう。
こんなに紳士で、優しい彼を
罪で縛り付けていた愚かな者たち。
それによって人生の半分を狂わされたアタシ達。
普通に平和に過ごしていたら
お互い会うことはなかったかもしれない。
だからといって、憎らしい過去が報われるわけではないけれど。
変えるのはこれからしかない。
「シェルク、お前はルクレツィアではない。
私は、いつも背中を押してくれる、そんなお前に感謝しているんだ。
戸惑いもあっただろうに、敵であっただろうに。
こんな私を今もこうして気にかけてくれる。」
突然、立ち止まり、振り返った彼が
柔らかな微笑みでこちらを見ている。
息が止まりそうになる。
彼は続けた。
「私は君を護り、救い、救われたい。
私と添い遂げてくれないか?
もちろんリスクはある。
私はこんな身体であるし、もしかしたら
歳をとらないかもしれない。
それが君を傷付けるかもしれない。
それでも、君といたい。」
それはまさかのプロポーズだった。
わたしはただ顔を赤くして涙が出るのを堪えられない。
わたしだって、こんな身体で長く生きられるかも分からない。そんなわたしにヴィンセントの真剣な言葉が刺さる。
「わた、しの時間はそんなに長くないかもしれない、のにっ!それでも、いいの?」
ヴィンセントは私の溢れる涙を拭ってくれる。
わたしの言葉は、彼にはプロポーズの返事は承諾の意味に捉えられた様だ。
次の瞬間には唇を奪われていた。
「んっ、ヴィンセント待って・・」
抗議して言ってみるも、止まることはなさそうな口付けに、シェルクは戸惑いながらも受け入れる。
「泣かなくても良い、シェルク。私はとっくに覚悟している。」
こんなに端正な顔をして、不器用そうにしている彼が、わたしに想いを告げようとしてくれている。
こんな嬉しい事があるだろうか?
「ヴィンセント・ヴァレンタイン、貴方って人は本当に分からなくて面白いですね。
わたしも貴方を救いたい。ありがとう、ヴィンセント。」
精一杯背伸びして、彼に抱きつく。
悔しいけれど、傍目で見ると親子にしか見えない私たち。
周りに見せびらかす様に、大人っぽいキスを交わす2人の姿があった。
その後、宝石店の前でのプロポーズだった彼が欲しい指輪を選ばせてくれ
その足でみんなの、仲間の待つセブンスヘブンで祝福を受け、本当に瞬く間にわたしの環境と心が動いて落ち着かなかった。
それはとても良い刺激で。
「ありがとうヴィンセント、わたしこんなに幸せだと思う事、人生で初めて、だと思う。
・・・あの、わたしも大好き。」
戸惑いながらも自分の想いを言えたことにシェルクは幸せを噛み締めていた。
「私もだ、シェルク。愛している。」
そして2人はいつまでも抱きしめあった。
-続く-