剣の娘と月と猫 2「つきしまあ、つきしまあ」
ゆさゆさ揺さぶられて、月島は目を開けた。目の前に女の子が居て、ぎょっとして覚醒した。一瞬のうちに、昨夜のことが思い出される。
「月島、時間大丈夫か?」
「は?」
「七時だぞ」
がばっと腹筋だけで跳ね起きた。信じられない。いつも五時前には自然と目が覚める。あまり熟睡できないタチなのだ。何時に寝ても起きる時間は一定になる。そのせいか、繁忙期には目の下にいつもクマがある。「人相がヤバい」と社の女性陣からは敬遠されがちだ。
——もの凄く頭がスッキリしている。よく寝たからなのか、『憑いてた』ものがいなくなったからなのか……。
「よく寝ていたな」
音之がにこにこしている。久しぶりの布団だったとかで、「煎餅だけど仕方なか」と月島の布団に勝手に潜り込んだのだ。月島の方は、座布団に寝っ転がる羽目に陥った。冬でなくて良かったと思うばかりだ。状況としては最悪の環境だったのに、気分がいい。睡眠は大事だ。
5462