Meteor 夕下がりの部屋の中で私の頬を指の背で撫でるこの男はきっと覚えてはいない。
昔はこうして触れるなど馬鹿馬鹿しいとか、お前とオレの関係では有り得ないだろうとか、一言加えて小馬鹿にした挙句に更に悪態を上乗せしてくる傲慢さが嫌に焼き付いてる程だ。
思い出すだけで胃の底がムカついてくる筈なのに、今ではその感覚でさえ思いだそうとしても出来なくてミザエルが苦し気に顔を歪める度に、目の前に座るカイトはそうしてきた。
何故、そう触ると一度問いかけたことがあったが、暫く言葉を選ぶように自身を眺めてくるカイトの瞳には嘗てのような煌々とした色はない。
――違う。
貴様の瞳はそんな、迷いを宿した光ではなかっただろうと、例え私が叫んで教え込んでもきっと明日には彼は忘れている。
2011