Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    kudouhikaru

    @kudouhikaru

    @kudouhikaru

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 19

    kudouhikaru

    ☆quiet follow

    サカキ様幼年期回想、書きかけのあれに先代幹部とのシーンを追加したくて。

    #pkmn腐
    Pokémon Red

    幼年期回想 シーンA乳白色の壁面の物陰に身を潜め、四歳のサカキは渡り廊下の奥を怖々覗き込んだ。
    遠くの方で、パタパタ……、と駆けて行く足音と慌てた悲鳴のような怒鳴り声がする。

    「サカキ様! どちらにいらっしゃいますか!?」

    サカキはその様子を満足したように見送って、くすくすと楽し気に笑った。戦利品である、事務用クリップでファイリングされた、A4サイズの書類を目の前に拡げた。
    表紙には、〈PG 製造計画書〉という、小難しい字体が踊っていて、紙面の端にはホムラシンク、ホムラヒミコという連名が記されている。四歳のサカキにとって、読めたのは両親の名前だけだ。生まれつき身体が弱く、熱病を度々繰り返すのが常のサカキはその日、珍しく体調が良い日だった。体調が良い日に、いつものように自分の部屋に籠って一人で遊んだり、勉強をしたりするのは退屈だ。こういう日、サカキはロケット団の団員である大人たちの誰かに構って欲しくて、よく悪戯を仕掛けるのだ。

    母・ヒミコが総指揮官を務める、ロケット団という組織は世界征服を企む組織ではあるが、表向きはロケットコンツェルンという財閥企業だ。
    四階エリアはサカキ達ホムラ家の人間が生活する居住区のエリアと、ヒミコの部下たちが職務に明け暮れるオフィスエリアとに分かれている。ロの字型に配置された、乳白色の長机に、人数分の青い事務椅子があちらこちらに配置されたオフィスエリアにサカキは立ち寄ってみたが、皆忙しそうに立ち働いていて、サカキの相手をしてくれそうな者はいなかった。ロの字型に配置された乳白色の長机には、幼いサカキがいつ顔を出してもいいように、子供用のロータイプの椅子がそれぞれに配置されている。サカキは無人の長机で、自分の椅子を脚立代わりに利用して、長机の天板に雑然と拡げられた文房具を眺め始めた。そしてーー、両親の名が記された書類を見つけ、辺りを見回し、誰も自分を見ていないのを確かめると、こっそりとそれを持ち出した。そして、冒頭に戻るのである。

    サカキは物陰に身を潜めたまま、戦利品であるその書類の束を適当にめくり上げた。書類には細かな文字と英数字の羅列がびっしりと並んでいた。どれをめくっても、そういう書類ばかりが続く。とあるページでサカキはふ、と目を止めた。書類の中央、正方形の図形の中に、それはいた。
    それ、は濃い水色と、桃色の二色で構成されている。どことなく、角ばっている、鳥のような生き物。ーー……、生き物、なのだろうか、これは。ロボットと言っても、差支えの無い風袋をしている。
    正方形の周りには、更なる細かい文字と英数字、計算式のような物が並んでいる。サカキはそれを不思議そうに、しかし、食い入るように眺めた。当時のサカキには読める代物ではなかったが、紙片の端には小さく、〈人工携帯獣 完成予想図〉と記されている。サカキはもう一度、書類の表紙に戻ってみた。改めて、〈PG 製造計画書〉の文字を眺める。サカキは、書類の束を手に小首を傾げた。

    家庭教師役を務める団員から、アルファベットは習ったことがある。サカキが読めるのはその箇所のみだ。

    ーー……、PG。PGって、なんだろう。
    この子のお名前なのかな。

    そこまでを考えて、サカキはもう一度、さっきのページを探し始めた。名前がついているのだとしたら、この子はきっと、ロボットじゃなく、生き物だ。生き物、なのだとしたら。

    「あの子もポケモンしゃん、なのかな」

    が。
    サカキが目当てのページに辿り着くのは何者かの手によって阻止された。
    書類をめくることに夢中になっていたサカキは、背後に人が立っているのに気付かなかった。黒衣の上衣の首根っこを、ひょい、と摘まみ上げられて、サカキの身体は高い位置に持ち上げられた。驚いて、書類の束を取り落とす。

    「見つけたぞお、この悪戯ボウズ」
    「離して、離してよお!」

    サカキは手足をジタバタとばたつかせて抵抗する。が、四歳の身体は大人の力の前では抵抗は無に等しい。耳元で降り注ぐ声から察するに、声の主はおそらく、母の側近で彼の世話係でもある幹部の一人であるスサノオだ。むう、と挑みかかるようにサカキが睨み上げると、彼を摘まみ上げているのは、やはりスサノオのようだった。年齢はまだ二十代の前半で、緑色の髪の青年である。

    「スサノオにーちゃ、降ろしてよお!」

    スサノオはサカキのリクエストには応えずに、彼が取り落とした書類の束を拾い上げ、表紙を見るなりげ、と呟いて絶句した。はーー、と荒々しくため息をつく。どうなってんだ、ウチのセキュリティは、とサカキに聴こえるか聴こえないかの声量で呟いた。

    「今日という今日は、おいたが過ぎますよ、若。貴方はご存じないでしょうが、今日貴方が持ち出したこの書類は、我々が今現在進行中のプロジェクトに関する重要な機密事項です。こんな極秘情報、貴方の手が届く範囲に置いた我々にも問題はありますがね」
    「現在進行中のプロジェクト……?」

    告げられた意味がわからない、というようにサカキはスサノオの言葉をオウム返しにした。あーー、と一言唸った彼は、言い直す。

    「まあ、あれです。現在手をつけている仕事に関する、ものすごーく大事な書類、ということです」
    「これないと、にーちゃ達困る……?」

    スサノオに高々と摘まみ上げられたままの状態で、サカキは小さく小首を傾げ、上目遣いにそう訊ねた。

    「大変困りますねえ。一つお聞きしたいことがあります。これを管理しているのは本来、イザナギの筈なんですが、どこで見つけました?」
    「会社の机の上にあったの」
    「ザル過ぎんだろ……」

    至近距離でサカキから、上目遣いで見つめられるというのはそれなりに殺傷能力があった。彼を目に入れても痛くないという程に可愛がっている、今現在この書類とサカキを探し回っている当のイザナギには致死量であろう。よって、スサノオも丁重に彼をリノリウムの床に立たせた。襟元が首元に引っかかる息苦しさから解放されて、サカキはほっと息をつく。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍰🍮
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works