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    コペルタ

    @blanketxxxp

    小説・名刺メーカーで作ったSS
    ョョのオリキャラやコラージュ等を
    まとめて投稿しています。

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    コペルタ

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    李亜属様【@pu_r_m_sn】のツイートを
    元に書かせていただきました。
    ※ソルジェラが、健在だった頃の過去話。
    ※🍚👧前提ですが🧀👧要素もあります。

    #リゾイル
    resoil
    #ホルイル
    foil
    #イルーゾォ
    iluzo

    リーダー:ダイリ「無事戻ったぜ、首尾は」
    任務から帰還すると、黒目を剥いたまま、
    床にリーダーが倒れていた。
    誰かに襲われたのか、気を失っている。
    ターゲットには、確実にトドメを刺した。
    まさか、オレ等に恨みをもったヤツの仕業か。
    「おい、リーダーッ!何が、あったんだ!!」
    すぐに上半身を起こし、何度も名前を呼ぶ。
    たとえ、奇襲をかけられたとしても。
    この人が、ヘマをする真似なんてしない。
    焦りと心配が入り交じる中、微かに聞こえた。
    「鉄分が……足りねぇ……」
    「……は?」
    おい、待ってくれ。今、アンタなんて言った。
    《鉄分》って、言ったのか。
    「鉄分って、レバーとかホウレン草の?」
    こくりと頷く。顔色が、とてつもなく悪い。
    このところ仕事が、続いていた。ロクに食べて
    いなかっただろうし、寝てもいないだろう。
    しかも上の立場だから、余計に休めない。
    「心配するな、寝れば治る」
    ふらつきながら、ゆっくりと立ち上がった。
    「リーダー……無理するなって!」
    慌てて肩を貸す。背丈が高くて、良かった。
    チームの中で、1番リーダーを支えられる。
    「ほら、着いたぞ」
    仮眠室に着くと、頭巾を外してベッドへ。
    「あぁ、すまない」
    安心させようとしているのか。ほんの少し、
    広角を上げて笑ってみせる。やめろよ。
    こんな時でも、アンタは変な気遣いをする。
    「何か食うか? 確か、ヌテラとパンが」
    「……今は、何も入らない」
    誰かを呼ぶか。いや今夜は、もう遅い。
    あぁ、誰よりも早く気付いていたら──。
    罪悪感を募らせていた時だ。
    「イルーゾォ、頼みがある」
    「どうした、リーダー」
    囁くような低い声に、耳を傾ける。
    「おまえに、オレの仕事を任せたい」
    「ふぇっ!?」
    間抜けな声が、出てしまった。
    オイオイオイ、聞き間違いじゃあねーよな。
    「オレが、復活するまでの間『リーダー代理』として、アイツ等の面倒を見てやってくれ」
    「このオレが……リーダーの、って……あっ」
    その言葉を最後に、眠りの世界へ行った。
    爆睡するリーダーの隣で、震えが止まらない。
    これは怯えでもなければ、焦燥でもない。
    心の底から、舞い上がっていた。100メートルの
    ムーンウォークを余裕で、こなせそうだ。
    「任せてくれ、リーダー!このイルーゾォ、
    絶対に全うしてみせるからなッ!」
    こうして、寝顔を独り占めにしながら、
    決意を固めた。


    *✨*👧*✨*


    「と、いうワケだ!今日から、このイルーゾォが『リーダー』として!ビシバシ仕切っていくからな、オメー等覚悟し」
    「ハンッ!正確には『代理』だろうが」
    説明し終えると、早速ツッコミを入れられた。
    プロシュートは、古株だ。後輩に指揮を
    預けられて、不満なのだろう。
    その弟分であるペッシは、
    プロシュートを宥めていた。
    すると古株の1人が、挙手した。
    「代理さんよォ~……なんでまた、
    よりにもよって『任された』んだァ?」
    「フフゥーン……知りたいか、それはだな」
    「納得いかねーぜッ!!」
    不服げに苛立ったのは、ギアッチョだ。
    チームの中でも、仲間意識が強い。
    何より、コイツもリーダーを慕っている。
    「おい、イルーゾォ!あのリゾットから
    『代理を任された』のかァ?」
    「あぁ、勿論だ!直接このオレに言ったぞ!」
    「本当か、その話」
    ソファに座っていたメローネ。
    器用にタイピングしながら、問いかける。
    「疲労困憊のあまりに『つい口走った』だけの
    可能性も、あるんじゃあないのか?」
    そうだ。昨晩は、2人っきり。証拠が、無い。
    オレでなくても、誰でも良かった場合もある。
    だが、リーダーの言葉は、本心だと信じたい。
    「まぁまぁ、どっちでも良いんじゃあない?」
    一斉に振り返った。1人がけのソファに、2人で
    座っている。発言したのは、ジェラートだ。
    ソルベの膝上に乗ったまま、明るいトーンで、
    「だってさァ~……当の本人は、暫く起きない
    だろうし。このままイルーゾォを『ブラフ』
    扱いしたって、何にも始まらないじゃ~ん。
    ねぇ、ソルベ♪」
    にっこり笑うジェラートに対し、
    「疑ったところで、1ユーロも入らんな」
    「うんうん♪それに、イルーゾォが『上手に
    嘘を吐けるタイプ』じゃあないでしょ?」
    オレ以外の全員が、低く唸った。
    「オメー等ッ!そこで、納得するなッ!」
    コケにしやがって。覚えてろよ、チクショー。
    「ったく、しょうがねーよなァ~」
    溜め息混じりに、ホルマジオが頭を掻く。
    リーダーの命令には、誰も逆らえない。
    信じてくれたようだが、渋々といった感じだ。
    「なぁ、そんなに不満か?」
    「不満よりも『不安』だな。暗殺や捕獲が
    出来てもオメー『采配』が、下手クソだろ」
    「サイ、ハイ……?」
    ぽかんとしている内に、話を進められていく。
    「先に『役割分担』でもするか」
    「待てッ!このオレが、決める!」
    ホルマジオに、リードされかける。
    フォローだとしても、許可していないからな。
    「じゃあ、遠慮なく決めるぞォー!」
    まず料理は、ギアッチョとメローネ。
    買い出しは、ホルマジオとプロシュート。
    そしてリーダーの世話は、オレとペッシだ。
    「ねぇねぇ、ボク達は?何すれば良いの?」
    パッと分担すると、2人が余ってしまった。
    「特に、無ェけど……洗濯とか掃除とか」
    「分かった!対象者を選択して、掃除すれば
    良いんだねッ!そんなの朝飯前だよォ~!」
    「代理。1人いくらで、始末する?」
    「そういう意味じゃあねーよッ!!」
    2人も古株ではあるが。仕事となると、目の色が
    変わって怖い。絶対敵には、回したくない。
    「じゃあ先に『おつかい』済ませておくか」
    肩を掴むと、プロシュートが手を払い除けた。
    「テメーと行ったら、ナンパストリートに
    寄り道するだろうが」
    「リーダー代理の命令だ。め・い・れ・い」
    青い瞳が、此方を睨む。
    白い歯が牙に見え、冷や汗が流れた。
    そういえば今日は、かなり暑かったような。

    購入リストを確認した後。
    ペッシと一緒に、玄関まで見送る事にした。
    「プロシュート兄ィ、気を付けてね」
    「オレがいなくても、寂しがるなよ」
    「うん、大丈夫だよ!皆いるからさ」
    「泣かされたら、必ずオレを呼べよ」
    先程までの態度は、一体何だったんだ。
    今のアイツは、ペッシの頬を包み撫でている。
    対するペッシは、慣れているらしい。
    額同士を合わせても、全く抵抗しない。
    兄弟分としての距離感が、おかしいだろ。
    「ほら、日が暮れちまうぞ」
    襟を掴まれるが、別れ惜しいようで、
    「ペッシィ!おまえの好きなスフォリアテッラも
    買ってきてやるからなッ!ミルクもだッ!」
    「うん、ありがと♪ホルマジオも気を付けて」
    「おぅ!ちゃんと良い子で、待ってろよ?」
    アジトから出た途端、大声を挙げる兄貴分。
    それにも慣れているのか、手を振る弟分。
    どっちが大人なのか、分からなくなってきた。
    「イルーゾォ」
    ホルマジオが、笑顔を消した。
    こういう時の、コイツの切り替えが、苦手だ。
    「なっ、何だよ……忘れ物か?」
    じっと見つめる。まるで、猫みたいに。
    相手の心を見透かすような、緑色の瞳で。
    「……ちゃーんと『留守番』しとけよ?」
    この野郎、にっこり笑いやがって。
    「フンッ、言われなくても……」
    つい身構えちまったじゃあねーか。
    しかも子供扱いしやがって、悔しい。
    「早く帰って来ねーと、承知しねーからな!」
    片手で、ひらひらと振るホルマジオ。
    名残惜しそうに、引き摺られるプロシュート。
    無事に、買い出し組を見送ると、
    「なぁ、ペッシ。プロシュートって、毎度
    ああなのか?何だか『ねちっこい』つーか」
    「まだマシだよ。出張の時は、もっとだよ」
    それ以上は、詮索しなかった。
    最年少ではあるが、何処か凄味を感じる。
    あの頑固なプロシュートを虜にするのだから。
    相当なテクニックを持っているに違いない。
    「リーダー見に行こうぜ」
    「うん……」
    何やら落ち込んでいる様子に、首を傾げる。
    やっぱり、兄貴がいないと寂しいのか。
    買い出しへ行かせるべきだったか。
    「違うからな。オレは……ッ」
    リーダーなら此所で、なんて言うのだろう。
    成長の為に、独り立ちの為に、おまえの為に。
    それとも、甘い言葉を吐くのだろうか──。
    言葉を詰まらせていると、ペッシが言った。
    「あのさ、リーダーって……オイラ達に
    『心配させたくなかった』のかな、って」
    自信無さげに、俯く。
    「オイラ、兄ィと違って『鈍い』からさ。よく
    分からないけど『隠してる』みたいだった」
    罪悪感がヒビ割れて、心に突き刺さる。
    あぁ、どうして。おまえは、このオレより
    年下なのに。誰よりも未熟なのに──。

    《アイツ等の面倒を見てやってくれ》

    せめてオレが、声をかけてやれたなら。
    「大丈夫?イルーゾォも……具合悪いの?」
    「あっ?あぁ、平気だ!心配すんなって!」
    オレは、リーダー代理だ。
    1番しっかりしないと、駄目じゃあねーか。
    気持ちを切り替え、そっと仮眠室へ入った。
    「リーダー、まだ寝てるね」
    「まだ起きそうにねーな」
    疲れが、目の下に浮き出ている。
    復活するには、大分かかりそうだ。
    「ペッシ、ちょいと『偵察』といくか」
    「テイサツ?でも、リーダーが」
    「このまま寝かせておこうぜ」
    ペッシを説得し、キッチンへ移動した。

    「なんでオレ達が『料理』なんだァ!?」
    調理器具の整理をするギアッチョとメローネ。
    またしても納得いかず、苛立つギアッチョ。
    些細な事にも、違和感があれば突っかかる。
    神経質なのか几帳面なのか、謎だ。
    「オレ達は、ただ従うまでだ。リゾットが、
    決めたようなモノだからな。少しの辛抱さ」
    「チクショー!リゾットが起きた暁には、
    オレの飯を口に捩じ込んでやるッ!!」
    「落ち着け、ギアッチョ」
    覚悟しやがれ、と鍋蓋をシンバルみたいに
    叩き合わせていた。逆に怒られるぞ、おまえ。
    「心配なのは解るが、物に当たるな。それと
    『氷漬け』にするなよ。後で、ドヤされる」
    ギアッチョから、ダダ漏れしていた冷気。
    メローネの制止により、静かに治まった。
    どうやらオレの《サイハイ》は、
    間違っていなかったようだ。
    「ギアッチョ達、これから何作るの?」
    「ペッシ!」
    トコトコと2人に近寄るペッシ。
    すると、あんなにキレ散らかしていたのに、
    「とりあえずパスタ茹でて、肉焼くぜ」
    スンッと瞬間冷却されていた。
    「因みにプッタネスカだッ!」
    アイマスク越しに目を輝かせるメローネ。
    何故か、プッタネスカを強く推している。
    料理担当にした理由は、メローネの場合。
    しっかり配分をしてくれると思った。そんな
    メローネとなら、ギアッチョも協力する、と。
    「ねぇねぇ!手が空いてたら、手伝って!」
    「ジェラートだ」
    再びトコトコ移動するペッシ。その後を追う。
    プロシュートが可愛がるのも、理解してきた。
    「イルーゾォ。おまえの仕事は、彼方だ」
    布巾を片手に、ソルベが指差す方向。
    其処は、リーダーの部屋だった。
    「部下が、行動している間。幹部の連絡を
    受け取らなければならないのは、おまえだ」
    「……確かに、そうだな」
    「リゾットなら『浮かれない』」
    いつも話していた。どんなに有利な状況でも、
    浮かれたら失敗する。頭を殴られた気分だ。
    ちょっぴりどころか、大分浮かれていた。
    初めてだったんだ。こんな風に、尊敬する人
    から任された事なんて。一度だって無い。
    「ソルベ。オレ……ッ!?」
    すっと差し出された手の意味を察した。
    「アドバイス料100万リラ」
    「金を取るなッ!!」
    仲間どころか、年下から金を毟るつもりか。
    危うく弱音を吐きかけるところだった。
    ジェラートに呼ばれて、ソルベが去って行く。
    いつもより、ドアが重たく感じる。

    「おぉ……結構片付いてるな」
    報告をする時にしか、殆ど入らない場所だ。
    室内を見回す。痕跡を残さない程に、綺麗
    さっぱりしている。恐る恐る椅子に座る。
    「リーダーの椅子、か」
    座り心地は、悪くない。むしろ、上司の特権と
    言わんばかりに、くるくる回って堪能した。
    ホルマジオだって、きっと此処には座れない。
    引き出しを漁ってみようとしたが、
    「流石にマズイよな」
    重要機密があれば、仲間でも許さないだろう。
    「ん?この書類って、全部……」
    パソコンの隣に置かれている書類の山。
    オイオイ待て待て。これって、昨日の分もか。
    意外と溜め込むタイプでは、なかったよな。
    「ふわぁぁぁ~……嘘だろ、リーダー」
    どれも今日中。幹部の野郎は、雑務を押し付け
    過ぎだろ。文字の羅列に眠気を誘われながら、
    ひたすら業務をこなした。


    *✨*👧*✨*


    《寝込んでいる間、よく頑張ってくれた》
    《このオレは、アンタの右腕だからな!》
    《おまえの報酬は、副リーダーの昇格だ》
    《本当かよリーダーッ!やったぜぇぇ!》

    「……て、イル……起きてッ!」
    「……んぎぁーッ!?」
    後頭部に振りかかる拳を避けきれなかった。
    見事にクリティカルヒットし、悶絶した。
    「クソッ……加減しろよ、プロシュート」
    「イルーゾォ、涎が」
    腕を枕にして、眠ってしまったようだ。
    しっかりと袖に、痕が付いてきた。
    どうやら、無事に帰って来たらしいが。
    流石に殴って、起こさねーだろ。
    「夕飯が出来たから、起こしに来たんだけど」
    「どっかの代理が、呼んでも来ないモンでな」
    夕飯が、出来ているだって──。
    窓の外を見ると、とっぷり暮れていた。
    「アイツは……ホルマジオは?」
    「キッチンにいるよ。アペリティーボの
    ブルスケッタ、まだあるって言ってたよ」
    起きて早々、大きく腹が鳴る。そういえば、
    「なぁ、スフォリアテッラ買ったよなァ?」
    頭も使ったから、甘い物も食べたくなった。
    「2個あるよ、兄ィが……んぐっ」
    ペッシの首に手を回し、即口止めをした。
    「まずは、顔を洗って来い」
    バタンとドアを閉め、出て行った。
    ペッシには優しいクセに、素直じゃあねーな。
    大量の書類をまとめ終え、リビングへ向かった。

    「オメー等、飯だッ!運びやがれッ!」
    顔を洗い終えると、旨そうな匂い。
    テーブルに、どんどん料理皿が並んでいく。
    「プッタネスカに牛肉トマト煮込みだ」
    やはり、オレの《サイハイ》は正しかった。
    「ほれ、代理さん」
    振り返るとホルマジオが、何か持っている。
    自然と口を開けてしまう。
    それは、アペリティーボのブルスケッタ。
    口の中に、トマトとチーズが広がった。
    「アヒャヒャ!どうだ『お手製』だぜ」
    丸ごと食べたせいで、何も喋れない。
    やっと飲み込んだ所で、料理を並べ終えて
    食卓を囲んだ。他のチームも、同じように
    食卓を囲み、一緒に食べているのだろうか。
    ぼんやり考えていると、ハッと思い出す。
    「リーダーの飯はッ!?」
    「事前に分けてある」
    メローネから、トレーごと差し出された。
    「寝てるかもしれないが、持って行ってくれ」
    「盗み食いするなよ」
    「そんなにオレは、意地汚くねぇ」
    全く信用されていない。ホルマジオ達には、
    笑われる始末だ。夕飯を仮眠室へ運ぶと、
    メモを添えて置いた。
    「飯だ、飯ィーッ!」
    「イルーゾォ、書類は大丈夫なのか?」
    「あぁ、バッチリだぞ!」
    ソルベに心配されたが、問題無いだろう。
    このオレは、鏡文字も読みこなせる。
    字に関しては、絶対の自信がある。
    「じゃあ、食べたら帰ろっかな」
    「えっ、残らねーのかよ」
    ジェラートは、不思議そうな顔をして、
    「だって、イルーゾォが看るんでしょ?」
    「そりゃあ、オメー……オレは」
    すると、目を細めて微笑んだ。
    「さぁーてっと♪帰ろっか、ソルベ」
    キッチンに皿を下げると、背伸びをした。
    ソルベも同様に、帰宅の準備を始めた。
    「帰る前に、リーダーの顔を見てこよっかな」
    ジェラートの後を追う前に、一言。
    「夜間中の呼び出し料100万リラ」
    「ぜってぇー呼ばねぇ!!」
    早く行っちまえ、と手で追い払った。
    「ところで皿洗いは、誰がやるんだ?」
    「オレ達は『料理担当』だもんな」
    「オイラやるよ、あっ」
    リストバンドを外した手を素早く掴んだ。
    「プロシュート兄ィ……?」
    「おまえの役割は、別だろ」
    リストバンドを嵌め直させると、
    ギアッチョの頭頂部に拳を振りかざした。
    「い"ってーだろうがッ!!クソジジイ!!」
    「甘ったれてねーで、皿洗ってこい」
    ドスの効いた声に、メローネも引いていた。
    「分かった、やるよ。ギアッチョ……」
    「チェッ!」
    大人しく片付け、皿洗いを始める2人。
    もしプロシュートが、代理を任されていたら。
    文句1つで、ボコボコにされていただろう。
    「兄ィ、怒ってるの?怖いよ」
    「ペッシペッシペッシペッシよォ~」
    泣き出す寸前のペッシを抱える。優しい声で
    小さな背中を撫でる姿は、過保護そのものだ。
    「良かったなぁ、兄貴に可愛がってもらえて」
    触るなと言わんばかりに、睨み付ける。
    「撫でてやろうとしただけだろ」
    よくホルマジオも近寄れるな。
    ペッシが直視したら、確実に大泣きだぞ。
    「ねぇ、兄ィ。リーダーに飴あげて良い?」
    ポケットから飴玉を取り出す。
    リーダーの目の色みたいに、真っ赤だ。
    「アイツは、弾以外なら何でも貰うぜ」
    「じゃあ、あげてくる!」
    パタパタと仮眠室へ行くペッシ。
    その様子を見守りつつ、
    「オメー等も洗い終わったら、帰れ」
    「言われなくてもそうするぜ」
    プロシュートが姿を消すと、ガチャガチャ
    音を立て始めた。パスタ鍋も洗い終えると、
    「オレ達の飯ぶち込んでくるかァ」
    「摂取させるなら、レバーかホウレン草だろ」
    淡々とツッコミ役に徹するメローネ。
    帰る前に、ゼリー飲料をゴクゴク飲んでいる。
    鉄分補給に、水分補給ってか。
    「イルーゾォ」
    聞き飽きた声に振り向く。
    「オメー1人で、残るのか?」
    「勿論だ。このオレがいなきゃあ、誰が」
    「んじゃあ。もう少し、オレも残るかな」
    サッカーの中継が、入るからと。
    飲みかけの酒瓶とグラスを準備していた。
    「疲れただろ、飲むか?」
    「いっ、要らない……部屋に戻るッ!」
    なんてヤツだ。のんびり晩酌しながら、
    サッカー観戦なんて、していられるか。
    きっぱり断った後、リーダーの部屋へ籠った。
    スフォリアテッラを片手に。


    *✨*👧*✨*


    すっかり夜も更けた頃。
    依頼が来ないか、ずっと待っていた。
    だが、電話の1本も鳴りそうにない。
    子機を持ってリビングへ行く。案の定、
    一服しながら、テレビを占領していた。
    「ヤニ吸うなら、外に出ろよ」
    「誰もいねーだろ。1本だけ吸わせてくれ」
    「このオレがいる、髪に臭いが付く」
    隣に座り、煙草を取ろうとしたが、
    「まぁまぁ、そうキレるなって。な?」
    代わりにグラスを渡され、勝手に注がれる。
    宥められた気分で、腑に落ちない。
    「代理お疲れさん、ほら」
    渋々乾杯をすると、やけで飲み干してやった。
    「アヒャヒャ、良い飲みっぷりだな」
    「フンッ!こんなのジュースだろ?」
    口を大きく開き、飲みきった証明をする。
    得意げに、もう1杯飲んで見せた。
    「……にしても、ホルマジオよォ~」
    ふらふらと膝上に乗り、頭に手を添えた。
    「オメー最初は『芝生』だったのに、な。
    今じゃあ『坊主』だもんなァ、ハゲたよなァ」
    「ハゲてねぇー、剃ったんだよ」
    撫でぐり回すと、掌に短毛の感触が伝わる。
    クセになる手触りに、問答無用で撫で続けた。
    「お気に召したかい?」
    「フンッ……さぁ、な」
    余裕な素振りを見せたつもりだった。
    そっと、髪の1束に触れられた途端。
    「浮気すんなよ、ガッティーナ」
    「……ふぇっ」
    面と向かって、口説いてきた。
    耳が熱い──きっと酒のせいだ。
    だって、相手はホルマジオだぞ。
    「おーい、どうした?」
    頭が、ふわふわしている。
    考えが、まとめられない。
    「この野郎『不意打ち』は、卑怯だぞッ!!」
    「誘ってきたのは、オメーの方だろうが」
    誘うって、何の話だ。むかむかしてきた。
    子機を取って、リビングを出る。
    「もう知らない!リーダー見てくる!」
    千鳥足になっているが、構わない。とにかく
    リーダーに会いたい気持ちが、オレを動かす。
    「危ねぇーぞ、ほれ」
    「んあァァ~!このオレに触るなァァ~!」
    ホルマジオを押し退け、仮眠室に入り込む。
    「リーダー……ホルマジオがァ~」
    「あんまり騒ぐな、夜中だぞ」
    覆い被さっていると、頭に手が置かれた。
    ホルマジオではない、この手は──。
    「イルーゾォか?」
    横になったまま、頭を撫でるリーダー。
    撫でるというより、確認する触り方だったが。
    「リーダー、リーダー……ッ!」
    勢いで抱きつく。Tシャツ越しに伝わる
    温もりが、オレの心を癒してくれる。
    「オレ頑張った、頑張ったんだ!」
    「そうか、すまないな」
    またアンタは、そんな顔をする。
    褒めてほしいだけなのに。
    「リゾット。調子は、どうだ?」
    「あぁ、まだ本調子ではないが」
    しまった。つい起こしてしまった。
    そうだ、こういう時こそ支えなくては。
    「リーダー、飯にするか?それともシャワー
    浴びるか?浴びるならオレが洗っ」
    ベリッと引き剥がされた。
    「オメーってヤツは、しょうがねーなァ~」
    寝起きの相手に、質問責めをするな。
    軽く叱られると、少しだけリーダーが笑う。
    「おまえにも迷惑をかけたな、ホルマジオ」
    「かかってねーよ」
    頭をポリポリ掻き、退室しようとする。
    「泊まんねーのか?」
    「あぁ、猫ちゃんが待ってるんでな」
    勝手に居座りだした野良猫が、そんなに大事か。
    すると、わしゃわしゃ撫でくり回された。
    「代理さん、リーダーを頼んだぜ」
    「オイ、ホルマジオ!」
    手だけ振り、そのまま帰ってしまった。
    ぐちゃぐちゃになった髪を直すと、
    「……イルーゾォ、食べても良いか?」
    視線の先は、トレイに乗った夕食と飴玉。
    そうだ。昨晩から、何も食べていないんだ。
    「おっ、おぅ!その前に温めてくる!
    キッチンに運ぶと、電子レンジのボタンを押す。
    「……オレ、アンタがいないと……駄目だな」
    安心した途端。全身の力が抜け、床に座った。



    「この字は、イルーゾォか」
    文字には、筆者の性格が出る。
    足音を立てずに、ベッドから降りた。
    「また増えてしまったな……」
    机の引き出しを開け、メモをしまう。
    その下にはチーム全員の写真と、あの子。
    「やはり、アイツは『開けなかった』」
    入団前の頃を思い出す。
    信頼こそが、もっとも大事だと。
    その結果、ボスには信頼されなかったが。
    「せめて、オレだけでも信じよう……」
    指先から血を垂らし、鍵を生成する。そして
    鍵穴に差し込み《想い出》を閉じ込めた。









    【FINE】
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