悪者/尾月 side尾 いやだ、やめてと拒まれるのは好きじゃなかった。
数少ない言葉に生きていることを否定された気持ちになるからだ。
女はよくしゃべる。
よくしゃべるのに察して欲しい事は声にしない。
伝えたいことがあるから言葉にするものだ。齟齬があっては成り立たないから会話をするのものだ。
それでも「どうして分かってくれないの」などと言う。
普段、喉を震わせ吐き出していた音の数々は何だったのかと思う。だらだらずらずらと、肝心な気持ちは隠しておいて表面的な事象ばかりを話していたのか。
時間の無駄だ。
くだらない。
そう思った途端、欲情する。
突っ込んで揺さぶって、思うまま飛沫を撒くまでの情事を想像して止まれなくなる。
いやだ。
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