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    razuruprsk

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    razuruprsk

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    2021.7月の類司Webオンリーの記念アンソロに寄稿した原稿です。
    ※年齢操作(成人済み)。
    ※進路ねつ造。
    ※修正はしていませんので、読みづらい部分があるかと思います。

    帰る場所 薄暗く肌寒い中、オレは自宅への道を歩いていた。
     今日は舞台の大千秋楽で、キャストやスタッフと打ち上げがあったので帰宅がかなり遅くなっている。
     一緒に暮らしている恋人の類には伝えてはあるが、やはり早く帰りたいのが本音だ。
    「起こさないようにしないとな」
     道路から見える部屋はカーテンが閉められ、室内は真っ暗なのが分かる。セキュリティーが整っているマンションは、二人の収入が安定してきた頃に借りた。
     エントランスの管理室に座る警備員が、オレの姿を見て頭を下げる。
     暗証番号を打ち込むと、エントランスのドアが開く。
     最初は厳重すぎないかと疑問に思ったけれど、マスコミ対策としては優良物件だった。
     降りて来たエレベーターに乗り込み、ボタンで階を指定してドアを閉じた。
     思った以上に疲れていたようで、もうすぐ着くと思った瞬間に体が重たくなる。開いたドアを抜けて、玄関の施錠を鍵で解除して中へと入って再び鍵をかけた。
     いつものように手洗いとうがいをして、リビングへ続くドアを押して開けると、目の前にはデスクライトを点けて作業をする類の姿があった。
    「類?」
    「おかえり、司くん」
     オレが名前を呼ぶと、類は振り返って頬を緩めた。
     深夜というか、もう明け方に近い時間だ。
     細かい作業をする時に使っている眼鏡を外して、類はオレに近付いてくる。目の下に隈は出来ていないので、徹夜はしていないらしい。
    「大千秋楽、おめでとう。そして、お疲れ様」
     強く抱き締められながら、背中をポンポンと叩かれてオレの涙腺が緩くなる。
     この公演は最初から最後まで慌ただしかった。
     出演予定だった主要キャストとの音信不通、代理も中々見つからない。
     代理のキャストも決まり、無事に稽古が終わって幕が開いたと思えば、流行り病によるキャスト達の体調不良での休演や会場へ持ち込んだ音響機材のトラブル。
     公演期間中だったが、お祓いにでも行くべきかと本気で悩む毎日。
     音信不通だったキャストとは、稽古が始まって三日目に無事に連絡がついた。
     稽古場に現れなかった理由を尋ねると、経験が少ない自分が舞台に立っていいものなのか不安になり、心の弱さから逃げてしまったそうだ。
     彼の話を聞いていたオレは寧々の事を思い出し、今度こそ一緒の舞台に立ちたいと伝える事しか出来なかった。
     それには相手も頷いてくれた。
     いくつもの問題を解決しながら、公演を終える。
     公演終了後にも他のキャストやスタッフが慰めるくらい泣いたのに、一番近くで見守ってくれた類に労われたりしたらもうダメだ。
    「るい」
     オレより少し高い背と、見た目よりもしっかりと筋肉のついている体に縋りつく。ボロボロと零れる涙は、類の服へと染み込み色を濃くする。
     類は何も言わず、オレの背中を撫でた。
    「司くん」
     優しく名前を呼ばれて顔を上げると、類がオレの額へとキスを落としてくる。くすぐったかったが、嬉しくて好きなようにさせた。
    「落ち着いた?」
     いつの間にか涙は止まっていて、類は最期に目尻にキスをしてきた。
    「あぁ、ありがとう」
     類の背中に回していた腕に力を入れると、オレの腰に回してある腕にも同じように力が入る。
     労わってくれた感謝の気持ちも込めて、類の唇に自分の唇で軽く触れると類は少し驚いていた。
     片腕が外れ親指で唇をなぞられ、また近付いて来る類の唇を慌てて手で阻む。
    「風呂に入らせろ」
    「はーい」
     類の腕から抜けて自室へ向かい、着替えを持って風呂場へと直行する。シャワーだけにしようと思っていたが、浴槽にはお湯が張られていて、柑橘系の香りの入浴剤が溶かされているようだ。
     頭と体を洗ってからお湯に浸かると、想像以上に体は冷えてきたらしい。じんわりと温まってきた体を伸ばしてほぐしたら、お湯へ体を沈めると顎に水面が当たる。
    「やばい、寝そうだ」
     意識を失わないうちに湯船から上がって、着替えと歯磨きを終えて化粧水や乳液、ボディクリームで肌の乾燥を予防したら、明かりの点いたリビングへと向かう。デスクライトと類が弄っていた機械は片付けられ、テーブルには水分補給用の水がコップに入れて置いてある。
    「こっちに座って」
    「あぁ」
     促されてソファーの前に座ると、ソファーに座っている類はオレが首に掛けていたフェイスタオルを手に取って、それに髪の余分な水気を吸い取らせるように優しく拭く。 
     自分の髪はガシガシと荒く拭くくせに、オレの髪を扱う時は酷く丁寧だ。
     あらかたの水分を取ったら、ヘアオイルを毛先から根元の順番でつける。
     ドライヤーを持った類は、延長タップにプラグを差し込んでスイッチを入れた。
    「熱いなら言ってね」
    「分かった」
     なんて類は言うが、適切な距離から当たる温風は心地よく不満なんて出るわけがない。
     ヘアオイルを付けた時の手順とは逆に、根元から毛先へと乾かしていく。
     類の指が髪を梳いていくのが気持ちよくて、眠気が増していく。
    「寝てもいいよ」
    「だが」
     飛び掛ける意識を必死に手繰り寄せながら瞼を開けようとするが、頭がカクンと落ちたり持ち上げたりを繰り返していると、類の手があやすように触れてくる。
    「大丈夫だから」
     ドライヤーが温風から冷風へと切り替わった瞬間、オレの意識はプツリと切れた。



     ドライヤーのスイッチを切ってヘアオイルなどを入れている大きめの道具箱へと仕舞ってから、完全に寝てしまった司くんが床へ倒れないように抱き上げて、二人で寝ているベッドがある寝室へと向かう。
     横たえる時に少し体が跳ねてしまったけれど、司くんが起きる様子はない。
     布団を掛けて、僕も司くんの隣に体を寝かせる。
    「本当にお疲れ様」
     すやすやと寝息を立てる頬を一撫でして、稽古が始まってからと今日までの司くんの頑張りを思い出していた。
     稽古が始まった当初は主要キャストが稽古場に現れないという心労からか、今までに見た事がないくらいに疲れていたけれど相手と連絡がついてからそれはなくなった。
     代理も無事に見つかり稽古は順調に進んで、残すは本番だけとなる。
     けれど、舞台の神様というのは意地悪だ。
     流行り病によるキャスト達の体調不良での休演、そして機材トラブル。今回の公演の座長である司くんは気丈に振る舞っていたけど、正直な話。
    かなり、しんどかったと思う。
     この舞台は配信をしてくれたので、僕は会場へ足を運ばずに家で司くんを待とうと考えた。
     公演が終わる日の帰宅は明け方になるかもしれないとは聞いていたから、少し早めに睡眠を取って午後二時頃に目を覚ました。
     眠気覚ましにコーヒーを飲みながら、スマホで公演の評価をチェック。これは僕が勝手に行っていた事だ。
     司くんが帰って来そうな時間を見計らって、浴槽にお湯を張ったら、寧々から貰った入浴剤をお湯の中へと放り込んだ。
     自室にあるデスクライトをリビングに持って来て、製作途中の機械を弄っているとポーンという音が響く。
     このマンションでは、エントランスに設置してある機械に暗証番号が打ち込まれると、該当する部屋で通知音が鳴る仕組みになっている。
     なるべくいつもと変わらないように接しようと、司くんを出迎えるような事はしない。
     リビングへと入って来た司くんの目は、少しだけ赤く腫れていた。
     きっと、終演後にたくさん泣いたのだろう。
     舞台上で挨拶をする時も、観客からお疲れ様と声を掛けられるほど涙を流していた。
    「大千秋楽、おめでとう。そして、お疲れ様」
     そう言って抱き締めて背中を叩くと、それが涙腺を刺激したようで司くんが泣き始めてしまったので、僕は何も言わずに司くんの背中を撫でる。
    「司くん」
     少しでも彼を元気付けたくて、声に甘さを含ませて優しく名前を呼ぶ。
    顔を上げた司くんの額にキスをすると、くすぐったそうにしていたけど、表情は嬉しいと物語っていた。
    「落ち着いた?」
     そう尋ねて司くんの顔を覗き込むと、涙は止まっていたので最後にと目尻にキスを落とす。
    「あぁ、ありがとう」
     僕の背中に回していた腕に力が入ったので、司くんの腰に回してある腕にも同じように力を込める。
     もう少しこのままでも良いかなと考えていると、司くんの唇が僕のそれに触れる。   
    司くんから触れてくれる事は滅多にないので、驚いてしまった。目の前の唇がいつも以上に魅力的に見えて、片腕を腰から外して親指でなぞる。
     もう一度、キスをしようとすると司くんの手で阻まれてしまう。
    「風呂に入らせろ」
     司くんからは飲食店に長時間滞在した時に移る、飲食店特有の匂いが漂っていた。
     きっと、気になるのだろう。
    「はーい」
     腕の中から抜け出て自室へと向かった司くんを見送ってから、これからたっぷりと甘やかそうと僕は机の周りを片付けたら水分補給用の水の入ったコップを用意して、ヘアケア用品とドライヤーを準備したのだった。
    「二日間、休みだからもっと甘やかしてあげるね」
     司くんの体を引き寄せる。
     まだ腫れの引いていない瞼をそっと撫でて、軽く触れるだけのキスを落とした。
     甘やかされる事に慣れていない司くんは戸惑うだろうけど、僕の思惑に気付いて受け入れてくれるだろう。
     しっかりと腕の中に囲い込むと、僕も目を閉じた。
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