明日世界が終わるとしたら「なぁ、セナ、明日世界が終わるとしたら……どうする?」
「なにそれ。くだらない」
「妄想でしか語れないから面白いんだろ? セナはその時何をしてる?」
どう考えても明日は終わらない。どっかの占い師の大予言が外れたのも、大昔のことのように感じるご時世だ。世界がもし明日終わるとしても、俺に出来ることなんて何一つなくて、どこからともなくヒーローが現れることもなくて、ああ、終わりが来るんだなと思うことくらいである。
「う~ん。普通に仕事をして、会える人になるべく会って……そうだなぁ。あんたに電話しても、全然繋がらなくて、どこ行ったんだろうって、必死に探して、走って走って探し回ってたらあんたは呑気にその辺で作曲とかしてるの」
「言えてる」
「それで、明日世界が終わるんだよ! って言ってるのに『今最後の曲ができそうだから待ってて!』とか言うの」
「わはは☆ おれっぽい」
「でそれを俺は隣で待ってて、ああ、こうしてる間にも世界は終わっていくんだなってあんたの後頭部を見ながら考えてるわけ」
「待っててくれるんだ」
「そう。で『できた! セナ聞いて!』って言われて最後の曲を聞いて、二人で世界の終わりを迎える。そんな感じかな?」
「最後がおれと一緒でいいの?」
「きっと違う場所にいたら、あんたのことが心配で呑気に世界の終わりを迎えられないからねぇ」
「わっ! 今ので霊感が沸いたから作曲してもいい!?」
「はいはい、どうぞ」
いつものように、紙とペンを取り出して鼻歌を唄いながられおくんは作曲し始めた。
もしこのまま明日世界が終わるのだとしても、あんたと一緒ならまぁいいかなって思ってしまった。
もちろん、明日も、明後日も、ずっとこの毎日が続いていけば、それはそれで幸せなことなんだけどね。