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    でえ遅刻だ〜い!五七ワンドロライ参加させていただきます!+1hほどです
    #五七版ドロライ
    #五七版甘えん坊

    僕は七海に甘やかされている自覚と、経験に基づく自信がある。例えば髪を乾かさずにぼんやりしていると文句を言いながらもドライヤーで乾かしてくれる時。例えば突然味噌汁が飲みたくなり駄々を捏ねると面倒くさい、という顔をしつつきちんと出汁から取って作ってくれる時。
    こういう話を周囲にするとあまり七海に迷惑をかけるな、とか惚気なら他所でやれ元担任と知人の恋愛事情知りたくもねえよ、とか散々言われるし当の七海にも死ぬほど嫌な顔をされる。しかし僕は全く意に介さない。なぜなら、この冷たい周囲の反応を跳ね除けて有り余るほど愛おしい七海の別側面を僕だけが知っているからだ。

    「ごじょうさん」
    「あ〜ハイハイハイ七海ぃ、危ないから今は離れて」
    「いやです、いますぐこっちきて膝を貸しなさい。肩でもゆるします、ごじょうさんなので」
    「ほんと酔い回ると女王様だよなオマエ……」

    疲労が溜まりに溜まった週末、七海はしこたまアルコールを摂取する。ビール、日本酒、ワイン、ハイボールその他諸々何でもありのちゃんぽん祭り。いくら酒豪とはいえ摂取量の上限はあるようで、そうなると普段の鉄面皮はものの見事に剥がれ落ちとんでもない甘えたが顔を出す。
    その飲み方は体に悪いからやめろと何度言い聞かせてもやめようとしない悪癖だが、あの堅物がこうもべろべろめろめろになると思うと強く止められないのは僕の悪いところだ。

    「だいたいオマエがつまみ欲しいって言うから僕が作ってやってるんだろ? 少しは我慢しな」
    「んうううう」

    なんだよそのんううううって。抱くぞ。抱き潰すぞ。一瞬本気で押し倒してやろうかと画策するが、今こいつを横たわせると確実に寝落ちる。興奮した僕を置いて。そんなかなしい目には遭いたくないので、ギリギリで理性の糸を繋ぎ合わせているのだ。こら飲みながら肩口に頭を擦り付けるな可愛いだろ、マジで抱くぞ。

    「あ」
    「ん? 何、どした。……まさか吐きそう?」

    僕の肩に顔を埋めながらどこか不穏な声を出す七海。僕としては七海のゲロくらい全然受け止めるがしかし。万が一七海がこういった自らの失態を覚えていると自殺しかけるほどのショックを受けることは経験済みなのでどうにか避けたい。

    「これ、あまいです」
    「は?」
    「あげます」

    主語のない短文に、更に首をひねった瞬間突然がちんと歯がぶつかる音。どちらのどこが切れたのか定かではないが、微かな血の味と強烈に香るアルコール。

    「いってえ!? というかオマエ僕が下戸なの知ってんだろ、酒の口移しやめろよな!? キスはいつでも大歓迎だけどさあ!?」
    「だってあまかったので」

    ごじょうさんすきでしょあまいの、と口の端についた血をぺろりと舐めとる。どうやら口が切れたのは僕の方らしく、ああごめんなさい切れてしまったと言いながら傷口をさすられた。ぴりりとした痛みの後に七海の整った顔が近づいてきたと思うと今度は柔らかい感触。

    「……んえ?」
    「あ、いやでしたか? ごめんなさいのキスのつもりでしたが」

    世界最強をここまで混乱させ、連続で間抜けな声を出させるのはこの世でこいつだけだ。今まで無量空処を受けた呪霊の気持ちが何となく今わかった気がする。

    「七海七海七海ィオマエさぁ! 俺がどれだけ我慢してるかわかっててやってんの!?」
    「ンン、まあ、はい」
    「そうだよなわからな…………。わんもあ」
    「だから、わかってますよアナタの我慢くらい。だからいま甘やかしてあげようとしてるんです」

    ほらおいでとばかりに両腕を広げているが、これは果たして現実なのか。普段は酔ってもここまでしない。よくよく七海を観察すると、平然とした表情を浮かべてはいるが普段酔う以上に顔が赤いような気が、しなくもないような。

    なるほど、なるほど! こいつ、本当は今僕に甘えたいんだ。ニンマリと口角が上がりそうになるのをどうにか抑え込み、まるで自分の方が甘えたいのだという表情を作り込む。

    「七海ぃ〜!」
    「ハイハイハイハイ」

    持っていたきゅうりを放り投げ(包丁はそっと置き)、「甘えたの子ども」の顔をつくる。こいつはこれにひどく弱い、ほら顔がほころんだ。ぎゅうと上から覆うように抱き込むとアルコールでほこほこした体からは七海の匂いが強く香る。あ〜これやべえクるな、と思うや否やパッと体を離された。

    「……なんですかこのブツは」
    「……バレた?」

    こっちもよしよしして? と下を指すと流石に酔いが冷めたか、瓦落瓦落レベルの振りかぶりをされたので甘えん坊振りまき会場はお開き。大変有意義な週末であった。
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    こういう話を周囲にするとあまり七海に迷惑をかけるな、とか惚気なら他所でやれ元担任と知人の恋愛事情知りたくもねえよ、とか散々言われるし当の七海にも死ぬほど嫌な顔をされる。しかし僕は全く意に介さない。なぜなら、この冷たい周囲の反応を跳ね除けて有り余るほど愛おしい七海の別側面を僕だけが知っているからだ。

    「ごじょうさん」
    「あ〜ハイハイハイ七海ぃ、危ないから今は離れて」
    「いやです、いますぐこっちきて膝を貸しなさい。肩でもゆるします、ごじょうさんなので」
    「ほんと酔い回ると女王様だよなオマエ……」

    疲労が溜まりに溜まった週末、七海はしこたまアルコールを摂取する。ビール、日本酒、ワイン、ハイボールその他諸々何でもありのちゃんぽん祭り。いくら酒豪とはいえ摂取量の上限はあるようで、そうなると普段の鉄面皮はものの見事に剥がれ落ちとんでもない 1912