お題小説『好き』
ワルイージさんに抱いている想いは掻い摘んで言えばそうなる。でも、そんな単純な言葉で良いのかと、口にするのを躊躇してしまう。
言いかける度に、いつも迷いが喉を詰まらせた。
この気持ちに偽りはないのに、何故かしら。告げてしまえば私自身も楽になるし、彼も喜んでくれるのに。
ごめんなさい、こんな及び腰の弱虫で。
姫さんがオレを深く愛してくれて、それを表す二文字を言えない事はなんとなく察している。
たぶん、親御さんと離れ離れになった事、初めに出会ったチコがほうき星に生まれ変わる為に一度命を落とした事から、それを言う事に臆病になってるんだと思う。
オレではその心の傷は埋められないが、いつまででもその単純で真っ当な真理の言葉を待つつもりさ。
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