ナーサリーライム(子守唄をあなたに) 狡噛は時折うなされることがある。何を夢見ているのか知らないが、眉間に深い皺を寄せて、苦しそうにうめいている。最初のうちは起こしていてやったが、そうすると彼は俺から離れてシャワールームに消えるか、リビングで水を飲んで顰めつらしい顔をするかだった。だから最近はじっと寄り添うことに決めている。狡噛が苦しんでいるのなら、俺も一緒に苦しもうと手を繋ぎ、朝まで一睡もせず夜を過ごす。それを狡噛に言ったことはない。目の下にクマを作った狡噛に、酷い顔だなと言われることはあっても、彼が自分の酷い顔に気づくまでは、俺は知らないふりをするのだ。
「あなたたち、揃いも揃ってひどい顔。出勤してすぐだけど、ちょっと仮眠でもしてきたら? 幸い仕事はないし」
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