絶好のデート日和 城木は、先日起こった事件の被害者が入院している総合病院に向かっていた。作成していた資料に齟齬が見つかり、その確認を被害者に行う必要があった。城木が直接足を運ぶ必要があるのか、と宮近に訊ねられたが、学生時代から面識のある父の知人なのだと言えば、それ以上何かを言われることはなかった。
道沿いには様々な店が軒を連ねているが、菓子店や花屋が多く見受けられる。おそらく見舞いの品として求められるのだろう。菓子店には飲食スペースが設けられているところもあった。
花屋の前を通りかかったとき、聞き慣れた声がした。
「じゃあそれで頼む」
通りすがりで用がないのに覗くのも、と思いながら、つい店の中を見てしまった。そこには白髪を後ろに流し、ブルゾンジャケットを羽織った男が花屋の店員と言葉を交わしていた。
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