夜間飛行「ハッピーハロウィンです、タイシンちゃん!」
暦は10月31日、夕刻を過ぎた頃合い。
寮の自室で、私服に着替え、ベッドに横になってスマホを虚心にいじり回してた時、同室のルームメイトのクリークさんが、元気よくドアを開けて部屋に入ってきた。
「……ハッピー、ハロウィン、クリークさん。――ご機嫌だね、いつもに増して」
「うふふ、それはもう、待ちに待ったハロウィンの日ですから」
彼女は、普段よりも何倍増しかの朗らかさを体一杯に表わすようにして、右手を頬に当てながら微笑んでいた。
クリークさんは、今年のトレセン学園の、寮合同ハロウィンパーティー実行委員の、衣装担当を任されている。
ただでさえ世話好きの彼女にとって、今年のハロウィンというものが特別な意味を持っているなんてことは誰が見たって明らかだった。
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